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デジタルで生命保険の顧客体験を再定義――ライフネット生命 森亮介社長デジタル変革の旗手たち(2/2 ページ)

大抵のモノやサービスはスマホで簡単に、しかも安く買えるようになった今だが、生命保険にネットで加入する人はまだ少数派だ。デジタルで生命保険の顧客体験をデザインし直し、新たな未来を切り開こうとしているライフネット生命の新たな挑戦について、ITmediaエグゼクティブのエグゼクティブプロデューサーである浅井英二が話を聞いた。

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 ライフネット生命におけるテクノロジー活用のポイントは、大きく2段階。1段階目は、接客能力の均一化であり、2段階目は個別化、最適化である。接客能力の均一化により、全国全ての顧客に同じ品質の体験を提供することが可能になる。第1段階はすでに実現している一方、個別化、最適化はまだ進化の途中だ。

 顧客がWebサイトのどの情報をどれくらい見ているのかなどを把握し、適したサービスを提案するなど、部分的には実現できている。しかし、やりすぎはかえって逆効果となる。「現在38歳のあなたに!」といったアプローチでは警戒されてしまう。「30代後半から健康が気になる方に」など、生命保険を自分事として捉えてもらえるような方法で進めているという。

 「スマートフォンの向こう側のお客さまを想像して、こういう状況ではないかという思いを巡らしながらプロモーションをしたり、メッセージを送ったりすることが、オンラインビジネスをもう1歩先に進めるために絶対に必要な取り組みです。こうしたサービスは、必ずしも1社で実現する必要はなく、ビジネスパートナーと一緒に新しい顧客体験を創っていきたいと思っています」(森氏)。

目指すのは「生命保険のネットサービス企業」

 ライフネット生命の未来像について森氏は、「これまでは“ネットの生命保険会社”でしたが、今後社長として目指していくのは“生命保険のネットサービス企業”への変革です」と話す。

 2021年にはこのビジョンが具体的な活動としてスタートし、初めてのグループ会社である「ライフネットみらい」が5月に設立された。

 ライフネットみらいは、これまでの生命保険会社ではできなかったことを全てやることを目的とした会社だという。生命保険会社には、さまざまな規制があり、やってはいけないことが多い。例えば、そのひとつとして、他社生保の商品と比較して販売してはいけないというルールがある。基本的に比較販売ができるのは、保険会社から委託を受けて商品を販売している保険代理店だけである。

 森氏は、「保険の比較販売を実現するには、当社とは別の会社に他社の商品を卸してもらう事業が必要です。そこでネット上で保険を販売するマーケットプレイス事業を設立しました。保険の販売は目的のひとつですが、真の目的は加入後のエンゲージメントです。例えば、引越しをすると住所変更が必要で、入院すると保険会社への連絡が必要です。新会社では、全ての保険を一括して管理するサービスも提供しています。今後も目指す未来の保険サービス、顧客体験をテクノロジーの活用により創造していきます」と話す。

聞き手プロフィール:浅井英二(あさいえいじ)

Windows 3.0が米国で発表された1990年、大手書店系出版社を経てソフトバンクに入社、「PCWEEK日本版」の創刊に携わり、1996年に同誌編集長に就任する。2000年からはグループのオンラインメディア企業であるソフトバンク・ジーディネット(現在のアイティメディア)に移り、エンタープライズ分野の編集長を務める。2007年には経営層向けの情報共有コミュニティーとして「ITmedia エグゼクティブ」を立ち上げ、編集長に就く。現在は企業向けIT分野のエグゼクティブプロデューサーを務める。


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