本当に「仕事ができる」部下を育てようと思ったら:ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)
「知識やノウハウが豊富」だからといって、仕事ができるけではない。「知識」や「ノウハウ」は仕事をするうえでの必要条件ではあっても、十分条件ではない。では何が重要なのか。
だから、私は次のように考えています。「人間心理」と「組織力学」に対する深い洞察力。そして、その洞察に基づいた的確な行動力。
この2つの能力を兼ね備え、人と組織を巧みに動かす「実行力」を身に付けたときに、はじめて「仕事ができる人」という評価を勝ち取ることができるのだ、と。
これはビジネススクールで学べるような「理論」を超えた、「ヒューマン・スキル」とでも言うべきもの。「深い洞察」に基づいた「ヒューマン・スキル」であることから、私はこれを「Deep Skill(ディープ・スキル)」と名付けました。
2000件の社内起業への伴走から学んだ組織人に不可欠なスキル
私は、2010年に独立をして以来、一貫して大手企業のボトムアップによる新規事業の創出を支援することを仕事にしてきました。
それ以前のリクルート社の新規事業開発室、オールアバウト社創業からの10年に渡るマネジメント経験においても、数多の社内起案の現場を見てきました。
そして、何か新しいことを社内で起案し組織の中で通していこうとする過程で、どんな「ディープ・スキル」が必要なのかを考え続けてきました。
新規事業を立ち上げるうえでは、さまざまなあつれきを避けることができませんから、必然的に「人間心理」や「組織力学」に向き合わざるを得ませんでした。
そして、「ディープ・スキル」は新規事業に限らず全ての組織人、特にマネジメントに関わる人に不可欠なものであることに気付きました。
規定のシステムを回すのが仕事であるかのように見える人も、事業環境の変化に合わせて、組織やマネジメントを変化させていくためには、「ディープ・スキル」を身に付けた「仕事ができる人」になる必要があるのです。
リーダーは「ディープスキル」の組織内での伝承を
今、エグゼクティブリーダーの立場の人は、皆さんすべからく自身独自のディープスキルを駆使して組織の中で成果を出してきた人ばかりでしょう。
この本で取り上げた21個の「ディープ・スキル」のうち、幾つかは自身で思い当たるはずです。そんなあなたが部下の仕事の仕方に何か物足らなさを感じるとしたら、それは「ディープ・スキル」に欠けているからかもしれません。
ですが、こうした組織や人を動かすための術は、あえて人に語ることはなかったのではないでしょうか。そういう話にまで踏み込んで部下と会話をすることは、意外と少ないものです。
本当に「仕事ができる部下」を育てようと「ディープ・スキル」を身に付けてもらうには、身近な人からの口伝が一番の方法です。この本をキッカケに、部下の皆さんと改めて「仕事とは」と話してみてはいかがでしょうか。
この本「Deep Skill」がその一助になればうれしいです。
著者プロフィール:石川明
株式会社インキュベータ 代表取締役
ボトムアップを軸にした新規事業開発に特化した専門サービスを提供。これまで、100社・2000案件・4000人以上の企業内の新規事業開発をインキュベータとして支援。
1988年リクルート社に入社。新規事業開発室のマネージャとして、リクルートの企業風土の象徴である、社内起業提案制度「New RING」の事務局長を7年間務めた後、2000年に総合情報サイト「All About」社の創業に参加。事業部長等を務めたのちに、2010年に独立をしインキュベータ社を起業。
大学院大学至善館 特任教授、明治大学ビジネススクール 客員教授。
著書に「Deep Skill」「新規事業ワークブック」「はじめての社内起業」がある。
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