第2回:働く幸せと、経済的合理性は両立し得る(2/2 ページ)
西洋と東洋の経営思想や哲学を探求して、数多くの世界トップクラスのカリスマ的な経営者との交流でたどり着いた経営哲学、「絆徳経営」とは。
そして、そうすることこそが、結果的にお客さまとの永い絆を生み出し、リピートによる売上の安定、集客コストの軽減、採用コストの軽減などの経済業理性につながるのです。だから、経営者は、社員を決して見捨てないでください! すると社員は、会社をありがたい場所と感じ、会社に貢献してくれるでしょう。そんな「働く幸せを実感する」社員を増やすことで、絆を醸成していくだけではなく、生産性が高く、利益率も高い新しい経営の形が「絆徳経営」なのです。
100年先も愛される絆徳企業を目指せ!
事業の持続化には、SDGsが必須の時代ですが、同時に必要なのは、「人事制度の交通整理」です。従来の人事制度では、対立構造が見られました。上司VS部下、先輩VS後輩などなど。そこで私が推奨しているのは、「社員にとって嫌なことは、極力取り除く」ことです。
例えば、従業員が「長時間労働が嫌だ」と考えるならば、時短勤務を選べる社内システムを作るべきです。その場合、労働条件が変わるので給与が下がることに納得したうえで、長時間労働を排除した時短勤務を選択する社員と、それを真剣に考えてくれた会社との間で、交通整理がなされたわけです。
このように、会社が「約束ごと」を明確に決めて、社員が選ぶ仕組みにする。その結果、対立構造は解決していくでしょう。
組織づくりは、「居場所と絆」の構築化
弊社では、社員をパフォーマンス(成果)とコアバリュー(価値観)の2つの軸で評価しています。成果が優れていても、価値観やマインドセットに難点があれば、給料は伸びません。
悩む社員に対して、そこで上司の登場です。上司は、部下の評価が両軸から高まるようにサポートします。すると、部下は上司を煙たい存在ではなく、「自分の昇給や昇進をサポートしてくれる存在」になるわけです。
同時に、スキル研修と理念研修の機会を設けて、社員の給料を上げる機会を平等に提供します。つまり、社員に努力してほしい方向性を、目に見える形で明確化することで、確固たる価値観に基づく組織づくりへとつなげていけるのです。
このように弊社では、上司が部下を育てる仕組みを何より重視しています。上司は部下を育てることで、自らも理解を深め、部下とともに成長していくことができます。その結果、社員は全員が役割を持ち「自分は、会社にとって必要とされている存在だと実感できる仕組み」が構築されるのです。
「居場所と絆」こそ、私が提言している「絆徳経営」の体現化です。この「絆徳経営」によって、それまで異なるレイヤーで考えられていた、経済的合理性と企業哲学が両立し得るのが最大の利点なのです。
著者プロフィール:清水康一朗 (シミズ コウイチロウ)
ラーニングエッジ株式会社代表取締役社長。「セミナーズ」の創始者。「社長の教養」主宰。「精神的にも経済的にも豊かな日本に向けて貢献したい」という思いから、業界最大級のポータルサイト「セミナーズ」を立ち上げ、経営教育の流通に尽力。これまでに、誰もが知る大企業から中小企業まで4万社以上の経営を支援した圧倒的な実績を誇る。
ギリシャ哲学、インド哲学、東洋思想などを探求し、西洋と東洋を融合した和魂洋才の経営哲学を確立。鮎川義介氏などの日本的経営の研究のみならず、アンソニーロビンズ日本事務局長、ブライアントレーシージャパン株式会社の代表取締役会長、ジェイエイブラハムジャパン株式会社の代表取締役会長、ドラッカー学会推進員などを歴任。
絆徳経営、「円形欲求モデル」「マーケティングαとβ」「タイムリバーサル」「W-PDCA」など数多くの経営理論を提唱し、日本人の経済教育、歴史教育、道徳教育をライフワークとして力を注いでいる。
世界トップクラスの外国人講師を招いたビジネスセミナーでは日本最大規模のイベントを行っている。
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