第3回『超訳ドラッカーの言葉』部課長編 部長は部門の責任者として経営陣の一角を担い、課長は現場の責任者として業務の遂行の責任を担う:ドラッカーが教える「成功に必要なもの」(2/2 ページ)
部長は、部門の責任者として、社長や取締役などの経営陣と近く、会社によっては経営陣の一角を担う場合がある。課長は、現場の責任者として、業務の遂行に責任を担っている。本来そうありたいが現実は違う。
部下を正しく方向付ける
大昔は、仕事といえば、力仕事が大半を占めていた。現在は、知識や情報を使う仕事が大半を占める。知識や情報を使う仕事は、文字通り、知識と情報が必要だ。一方、1人の人間が、ありとあらゆる知識を身に付け、ありとあらゆる分野に精通することはできない。現在の仕事は、ある分野に詳しい多くの人間の協力があってはじめて成り立つものになっている。この記事も、企画する人、原稿を書く人、文字校正を行う人、ページのデザインを行う人、インターネットにアップする人がいて成り立っている。異なる専門性をもつ人たちの分業によってはじめて記事というものが出来上がる。前記した通り、まさに、ある分野に詳しい多くの人間の協力があってはじめて成り立つものだ。話しを例えから部課長に戻そう。部課長として、仕事をまっとうするためにどうすればいいのだろうか。
ドラッカーはこう言っている。
あなたの部下が正しい仕事を正しく行うこと。
それが、あなたの仕事です。
管理職は、「部下を正しく方向付けする努力」だけでなく、
「部下を間違って方向付けしない努力」も必要です。
誰もが、自分では気付けないところで
部下を間違って方向付けしてしまうからです。
あなたの部下が知りたいことは、
「あなたの指示」ではなく「あなたの意思」です。
あなたに必要なのは、
「部下への指示」ではなく「部下との会話」です。
今日も管理職としての責任をまっとうするために、
部下と会話をしながら、
「自分は部下を間違って方向付けしていないか」を
真摯に探していきましょう。
『超訳 ドラッカーの言葉』
部下に困っている部課長は、部下を自分の思いのままにコントロールしようとしている。部下が力を発揮している部課長は部下を方向付けしている。組織上の役職に上下関係があっても、仕事においては上も下もない。部課長の仕事は、部下を動かすことではなく部下を方向付けすることに変わったのだ。
ある企業の事例
ある企業の事例を紹介したい。その会社の社員は300社の顧客企業に常駐し、離れた所にいながら日々連絡を取り合って仕事をしている。そして、誰がどんな強みを持っているかをお互い知っている。例えば、社員の誰かが、あることについて質問をすると、それに詳しい何人かの社員が自発的にその質問に答えてくれる。人それぞれ持っている専門性が異なるがゆえに、返ってくる答えもさまざまだ。質問をした社員も、自分の視界から見えなかったものが見えるようになる。結果として、さまざまな角度から検証された考えがまとまる。
また、「何年か前に、このようなことに時間がかかったけど、昨年はこんな工夫をしたらうまくいった。だから、この点に気を付けて、こうやるとよりうまくいきます」といったノウハウも共有している。そこには、上司の制圧もなければ、他の社員の手柄を悔しがることもない。足の引っ張り合いなどもちろんない。仕事に上も下もない。あるのは、貢献意欲による知恵の結集である。その企業の社員は、誰にも管理されることなく、同じ方向を向いて、自発性によって高度にネットワークされている。では、部課長として今日から具体的にどうすればいいのだろうか。
ドラッカーはこう言っている。
私たちは組織で仕事をしています。
私たち全員が組織の一人です。
お互いの関係に責任をもつこと。
それが、コミュニケーションです。
コミュニケーションは、「私からあなたへ伝達するもの」ではなく、
「私たちの中の一人から私たちの中のもう一人へ伝達するもの」です。
組織の一人としてふさわしいコミュニケーションをしましょう。
『超訳 ドラッカーの言葉』
仕事は、言葉を交わしただけではうまくいかない。脳と脳がつながってはじめて理解が生まれ、心と心がつながって協働となる。私たちは、上司部下という上下関係を基礎とする考え方から脱皮しなければならない。私たちの働き方は、上下関係からまったく違うものに変わった。そして、部課長の仕事は、「組織の中間に位置する管理職」から「組織の中心となって成果をあげる推進者」に変わったのだ。
以上、今回も知識や方法論ではなく責任という視点で部課長の仕事について話をした。次回の第4回は、一般社員としての責任についてお伝えする。
2023年9月からITmedia エグゼクティブ主催にて『ドラッカーに学ぶ「部下に成果をあげさせる上司5つの実践」』と題して勉強会を開催します。お申込みをお待ちしています。勉強会でお会いしましょう。
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ドラッカーに学ぶ「部下に成果をあげさせる上司5つの実践」
9月27日(水)18:30〜19:30 第1回上司がしなければならない1つのこと
12月13日(水)18:30〜19:30 第2回上司が果たすべき2つの責任
3月13日(水)18:30〜19:30 第3回上司が継続すべき2つのこと
※案内は開催の1カ月ほど前からメールでお送りしますので、そのメールへの返信でお申込みください。
著者プロフィール:山下淳一郎 ドラッカー専門の経営チームコンサルタント
ドラッカー専門の経営チームコンサルティングファーム トップマネジメント
東京都渋谷区出身。ドラッカーコンサルティング歴約33年。外資系コンサルティング会社勤務時、企業向けにドラッカーを実践する支援を行う。中小企業の役員と上場企業の役員を経て、ドラッカーの理論に基づいた経営チームをつくるコンサルティングを行う、トップマネジメントを設立。現在は上場企業に「経営チームの研修」「経営幹部育成の研修」「後継者育成の研修」を行っている。
著書に『ドラッカーが教える最強の後継者の育て方』(同友館)、『ドラッカー5つの質問』(あさ出版)、『新版 ドラッカーが教える最強の経営チームのつくり方 』(同友館)、『日本に来たドラッカー 初来日編』(同友館)、『ドラッカーが教える最強の経営チームのつくり方 』(総合法令出版)、『ドラッカーのセミナー』(Kindle)、『ドラッカーが教える最強の事業承継の進め方』(Kindle)がある。主な連載に『ドラッカーに学ぶ成功する経営チームの作り方』(ITmedia エグゼクティブ)がある。ほか多数。
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