付加価値のつくりかた〜一番大事なのに誰も教えてくれなかった仕事の本質〜:ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)
付加価値を生み出す人、会社になるにはどうしたらいいのか? 従業員の平均年収は2000万円超え、本体の1人当たりの営業利益額が1億円超えという会社に学ぶ、付加価値の作り方とは。
マーケットイン型企業「キーエンス」の思考法
ではどのようにその成果を実現しているのか? 下記はその片りんです。
(1)マーケットイン型の経営:キーエンスでは、マーケットイン型の新商品企画がなされています。なぜお客様が買うのか? 本当にその商品・機能は使われるのか? 使われたら本当に役に立つのか? どんな役に立つのか? について商品の企画段階(開発前)に突き詰めることが徹底されています。「自社でもそれはやっている」と思う人もいるかもしれませんが、追求度と徹底度が他社とは異なります。
(2)商品の標準化:さらにキーエンスでは、特注品ではなく「標準品(標準化された商品)」を作っています。にもかかわらず、作る前に現場に足を運んでお客様の直接潜在ニーズを見つけ出す市場調査を行っています。この仕組みがあるため、最大公約数の仕様・機能を備えた高付加価値状態の標準品での対応を可能にしています。
(3)世界初・業界初の商品:キーエンスでは、「お客様も気付いていない潜在ニーズ」を、徹底したコンサルティングセールスによって探り出し、まだ創られていない付加価値(新創造価値)」を備えた商品=「世界初・業界初の商品」を生み出しています。この世界初・業界初の商品については、お客様でも気付いていなかったような、潜在ニーズの問題解決手段で実現しています。その実現のためには、 世界一の高度な技術だけを重視するというわけではなく、商品がどのようにお客様に使われるのか、その使われ方(アプリケーション)を追求した機能を持つ商品であることが重要なのです。
その他にも、徹底したコンサルティングセールスの仕組み化、BtoBマーケティングの仕組み化、生産体制の仕組み化などさまざまな面において、組織の付加価値生産性を高める仕組みが追求、徹底され続けているのです。
付加価値生産性向上のテーマは仕組み化
付加価値生産性を高めるために組織として実施していくべきことは、仕組み化です。年商1000億円の企業で、誰か1人が1億円の売り上げを向上させたところで、0.1%の改善にしかなりません。しかし2%改善の仕組みを創り、全社展開できれば2%=20億円の改善になります。この2%の改善を10回行えば21%=210億円もの改善につながるのです。そんな改善手法があるのかと思いがちですが、実際には現場の営業レベルまで解像度を高めてみれば、数%どころか数10%の改善策はたくさんあるのです。その改善策が組織の中で、常に気付きとして発見・発信され、全社展開されるような仕組みがあなたの会社にはあるでしょうか?
私は今、年商4000億円、営業利益15%を超える優良企業の付加価値生産性革新にも取り組んでいますが、そんな優良企業においても、キーエンスから学んだ付加価値という視点を用い、組織の解像度を高めれば、組織全体の生産性を高める仕組みは適応できるのです。
著者プロフィール:田尻 望(たじり・のぞむ)
株式会社カクシン 代表取締役CEO
京都市出身。大阪大学基礎工学部情報科学科卒業後、株式会社キーエンスでコンサルティングエンジニアとして重要顧客担当、また販売促進技術、海外販売促進技術に従事。その後研修会社の立ち上げに参画し、独立。年商10億円〜1,400億円規模の企業で、経営戦略コンサルティング実施、月1億円、年10憶円の利益改善などを実現している。社会変化に適応した企業の長期的発展を目指す。著書に「構造が成果を創る〜価値を構築するストラクチャリング思考と手法〜」(中央経済社)、発刊10万部を突破した「付加価値のつくりかた 一番大切なのに誰も教えてくれなかった仕事の本質」(かんき出版)がある。
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