一流のチームは一日にして成らず――『易経』が教えるブレないリーダーの心構え:ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)
経営者や研究者、医師、スポーツ選手……名だたるリーダーたちが愛読する中国の古典『易経(えききょう)』。どんなことが書いてあるのか。なぜ、人々は魅了されるのか。時代を超えて読み継がれてきた名著のエッセンスを、易経研究家・小椋浩一さんがお話しします。
多くの意見を入れる「空の器」になれ
「器は空にして用をなす」
という言葉があります。器というのは、中身が空であってこそ役に立つのだ、という意味です。これは「陰徳」「器の大きさ」「度量」などと表現される陰の力で、相手の意見や気持ちを受けいれる傾聴など、包容力を示します。
持論でパンパンに自我をふくらませた上司や先輩や親に、何か提案したいと思いますか?もう頭に入る余地などなく、何を提案してもムダと考えるでしょう。
「陰徳」「陰働(かげばたら)き」といった、表には出なくても陰でそっとなされる善行があります。そうしたことのできる人がいる組織や家族は幸福です。
気づかないうちに皆が正しい方向に向かい、幸福になっていくのですから。傾聴も同じです。何もしていないようでも、話をじっくり聴いてくれる存在の有難さは、あなたにも思い当たるはずです。
「陰徳」の大切さ
積善の家にはかならず余慶あり」
という名言が『易経』にはあります。これは、善行を積んだ家にはかならず幸福が訪れるという意味です。「陰徳の人」というのは一見すると損をしているように見えますが、もっと視野を広げて長い目で見れば、そういった行為の積み重ねは、当人だけでなく子々孫々にまで幸福をもたらします。
もしかしたら、自分の生きているうちには間に合わないかもしれません。でも子孫にはいつかかならず幸福が訪れます。その時、善行を積んだご先祖であるあなたに尊敬の念が起こるでしょう。反対にあなたの行ったのが悪事であれば、どうなるでしょう。
大人はたとえ何も為さなくても、度量があれば十分な存在意義があります。さらに陰徳を積めれば、きっといつか良いことがあるでしょう。あなたにも、周りのあなたを頼りに思う人々のすべてにも。その時あなたは、尊敬の対象になるのです。
【易経からの問い】あなたにしかできない「人知れず自分がすべきこと」は、何でしょうか?
本稿で取り上げたリーダーの心構えは、紀元前から語り続けられてきた先人の叡智です。「時流に乗る者は時流により滅ぶ」という真理の裏で、三千年もの歴史の波を経て生き抜いた『易経』には、決してブレないものがあります。より詳しく知りたい方は、拙著『人を導く最強の教え『易経』 「人生の問題」が解決する64の法則』』をぜひご参照ください。
著者プロフィール:小椋浩一(おぐら こういち)/易経研究家
1965年名古屋生まれ。某電機メーカー経営企画部プロジェクト・マネジャー。名古屋大学大学院経営学博士課程前期修了。早稲田大学商学部卒業後、上記電機メーカーに入社。海外赴任を経て会社を「働きがいのある会社ベスト20」に導くが、キャリアの絶頂期に新規事業で大損失を出し居場所を失う。その後『易経』との出会いで人生観が180度変わる。現在は、全社横串の次世代リーダー育成の傍ら、社内外でセミナーや講演を多数行っている。
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