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リーダーが実践すべき、部下との信頼を築く『大切の法則』(2/2 ページ)

部下をほめるとき、自分の価値観を相手にも求めたり、あいさつ代わりになっていないだろうか。相手の価値観を知り、どんな思いで行動しているのかに注目してほしい。

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部下との信頼を築く「大切の法則」

 部下をほめる中で、向井理事長が常に心に抱き、実践していた指針があります。それは、私が講演で伝えた「その人が大切にしていることを大切にしましょう」という一言でした。

 ――ほめる相手が大切にしていることを、ほめる。

 この行動こそが、部下を惹きつけるリーダーが実践している“重要なワンアクション、信頼を築くための「大切の法則」なのです。

 ほめ育を導入する前から、向井理事長自身は部下をよくほめていました。ところが振り返ると、自分本位な面があったといいます。例えば、自分自身が大切にしている価値観をそのまま職員にも求めてしまったり、時にはほめることがあいさつ代わりになっていたりしたのだそう。

 そこで向井理事長は、相手の価値観を知ろうと意識を変えました。普段の何気ない行動を観察し、“誰のために動いているのか”“どんな思いで行動しているのか”に注目したのです。

 すると、「普段は物静かで目立たない存在だけれど、子どもたちが気持ちよく過ごせるように、人の目に触れないところで後片付けをしている」「明るく周囲を笑顔にするタイプで、忙しいときでも同僚を気遣い、子どもたちにも常に前向きな声をかけている」といった気づきが生まれたといいます。

 そして、「誰もいない教室で、1人で後片付けをしてくれてありがとう」「子どもたちへの優しいあいさつに元気をもらいました」と、具体的な行動をほめ言葉として伝えるようになりました。相手の“行動の背景”に目を向け、そこにある大切な思いを認めたとき、初めて心が通い合う実感が生まれたそうです。

 ほめる相手が大切にしていることを、ほめる――これは、シンプルでありながら効果的な信頼構築のための行動です。相手の「大切」を尊重する姿勢は、「あなたを理解しようとしています」という無言のメッセージになり、信頼へとつながっていくのです。

2年間で離職率が5分の1に

 取り組みを続けた結果、同法人では離職率が目に見えて下がりました。入職1年目の退職は3年連続でゼロに、わずか2年で離職率が約5分の1になったのです。

 人が辞めない職場になると、雰囲気も明るくなります。当然ながら不平不満の声は聞かれなくなり、相手の良いところを見つけて伝えようとする姿勢に変わりました。そして、職員同士の間に「ありがとう」と伝え合う感謝の文化が生まれたのです。

 信頼関係が築かれると職場には安心感が満ち、組織そのものの成長にもつながりました。ほめ育導入当時は3園でしたが、現在は7園にまで拡大。人が辞めず、ベテラン職員が育ち、管理職層が自然と形成されたことで、「新しい園をつくろう」という動きが生まれたのです。かつてはトップダウンで旗を振っていた向井理事長も、「いまでは職員が自ら動く組織に変わってきた」と語ります。

 私は向井理事長の姿を見続けてきて、改めて確信しました。組織文化は上から下にしか広がっていきません。リーダーのあり方、覚悟と本気度が問われるのです。

 向井理事長は、こうも語ってくれました。「ほめ育は、人間性が出る取り組みだと感じています。だからこそ、やっていて楽しいし、これからも自分自身のスタイルとして続けていきたいです」と。

 信頼を築くというのは、方法論ではなく生き方の問題です。リーダーが本気で人と向き合うとき、組織の空気が変わり、成果もついてきます。同法人の変化は、何よりの証と言えるでしょう。

著者プロフィール:原 邦雄(はら くにお)

株式会社スパイラルアップ代表取締役/ほめ育財団代表理事

兵庫県芦屋市出身。大学卒業後、メーカーを経て、船井総合研究所に転職。様々な業種の人材育成に関わる。その中で、従業員のエンゲージメントの重要性を実感し、独自の教育メソッド「ほめ育マネジメント」を開発。これまでに600社以上の企業や教育機関に研修を行なっている。また、アメリカ、インド、中国、オーストラリアなど世界20カ国に進出。著書に『今すぐできる! 今すぐ変わる!「ほめ育」マネジメント』(PHP研究所)など。


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