イノベーションコンセプト入門
【第3回】「誰に」を深堀りする
まずは顧客にあたる「誰に」を述べていきます。「誰に」対して価値を提供するかは、イノベーションコンセプトの一番重要な要素に当たります。どこの誰が顧客になり得るか、どの顧客のニーズを深堀りしなければいけないか、イノベーションコンセプトの大きな問い掛けとなります。
ちなみに、市場リーダーたる企業が失敗するときは、間違いなく「誰に」の要素が欠落するときです。かつてGMを含めた米国自動車ビッグスリーなど、衰退する企業に必ず見られるのが顧客不在の事業戦略です。まさに言うは易し、行うは難しとは、顧客を理解することに他なりません。
既存事業の見直すため、または新たなる成長を目指すため、顧客を絞り込むのか広げるのか(+/-)、はたまた他の顧客と掛け合わせるのか(×)、顧客単位をさらに細かく割るのか(÷)が選択肢となります。
任天堂Wiiは足し算、リゾナーレは割り算
例えば任天堂のWiiは、DSと同じく一世帯当たりのユーザー数を増やすために投入された「家族向け据え置き型娯楽端末」です。対象顧客の単位は、親、子供、高齢者を掛け合わせた家族全員に拡大されています。(×掛け算)家族全員から敵視されず、年齢性別を問わず、毎日利用するマシンが目標です。
ちなみに任天堂社長は、戦うべき相手は競合他社のゲーム機や携帯端末ではなく、「ゲームに対する無関心」です。故に個人ユーザーではなく、家族全員を対象とし、誰にでも楽しめるような双方向性を持たせました。Wiiリモコンもその1つの施策でしょう、2009年末時点、Wii本体の全世界出荷台数がファミリーコンピュータを上回り、任天堂の据置型ゲーム機としては過去最高になりました。累計で7000万台を突破したとのことです。
また「誰に」の単位を小さく分けることで成功したイノベーションコンセプトがあります。例えばリゾート再生で有名な星野リゾートでは、「リゾナーレ小淵沢」を家族向けリゾートから、親子別々で楽しむリゾートへコンセプトの転換を行いました。「家族」の単位から「親」と「子」に分けたのです。(÷割り算)
そもそも両親はリゾートに来て、子供の面倒を見ることが楽しいのか、という社長の問いかけから始まりました。子供だけに焦点を当てるのではなく、面倒を見る両親にも焦点を当て、家族全員が楽しめるリゾートという斬新なコンセプトの誕生です。結果、子供が自然体験プログラムに参加する中、近場で両親がリラックスできる場所を確保し、また託児所などの施設が充実しました。
「誰に」とは一体誰か
ネットビジネスの拡大により、「誰に」価値を提供するのか、線引きがあいまいになりつつあります。無料ユーザーがサービスの良さに惹かれて顧客になる場合、または自身の顧客がブログやTwitterを使い積極的な口こみを行うことで販売が促進される場合など、明確な顧客像がつかみにくくなっているのが現状です。
例えばアフィリエイト広告やGoogleなどの無料検索サービスなど、モノやサービスに対価を払う顧客だけではなく、利用するユーザーも「誰に」として考えなければなりません。Googleの買い手(広告主)は、検索サービスの使い手(ユーザー)でもあります。また逆もしかりです。本来は便利な検索サービスをユーザーに提供するのがGoogleの広告モデルですが、一ユーザーを将来の潜在顧客として見ることも可能です。
とはいえ「誰に」を考える重要性は少しも変わりません。それ以上に「誰に」対して価値を提供するのかに焦点を当てる必要があります。ネットを活用し、大多数の潜在顧客にアクセスできることで、自社製品サービスをどのように使い方をしているか、どこに魅力があるのかないのか、より深い理解と洞察が求められています。
お勧めするアプローチは、「誰に」を考えるときには、必ず他社の顧客、将来の潜在顧客について考え、理解を深めることです。業界の変化はいつも自社以外の顧客から生まれます。その変化についていくためには、自社の既存顧客だけでは足りません。なぜ他社の顧客は自社に変わらないのか、なぜ潜在顧客は自社の製品サービスに興味を持たないのかを理解する必要があります。
次回はこのコンセプト創出の方法やアプローチを述べていきます。
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