ITmedia エグゼクティブ勉強会リポート
AIは仕事を奪うか、解放するか――大野有生氏が語る仕事の再定義(1/2 ページ)
2026年4月23日に開催されたITmedia エグゼクティブのオンライン勉強会で、Nexgen Japan代表取締役CEOの大野有生氏が「AIは仕事を奪うのか、人間を解放するのか――歴史が示す、次の一手」をテーマに講演した。サプライチェーンとAI実装の現場を20年以上見てきた同氏は、雇用不安をあおるのでも、楽観論を唱えるのでもなく、技術進化の速度と産業史の共通パターンを重ねながら、経営層が取るべき意思決定の順序を示した。
講演の起点は、よくある「AIは仕事を奪うのか」という問いそのものの再定義だ。大野氏は、二者択一の議論では実務に落ちないとする。重要なのは、どの職務が置き換わり、どの機能が拡張され、どこに人間の判断を残すかを企業ごとに設計することだという。言い換えれば、AI時代の論点は「賛成か反対か」ではなく「再設計を誰が主導するか」に移っている。
「数年以内」の変化を前提に、経営判断の時間軸を組み直す
大野氏はまず、イーロン・マスク氏の発言を引きながら、社会変化の時間軸が従来想定よりかなり短くなってきたと指摘する。スライドでは、先端AIモデルの能力向上ペースが2024年4月以降に加速したという分析が示され、改善スコアが従来の年8ポイントから年15ポイントへ伸びている点が紹介された。性能の数字よりも、推論や強化学習の進展で実務適用が及ぶ領域が広がりつつあることに目を向けてほしい、というのが同氏の力点である。
さらにデータ環境の変化も大きい。世界のデータ量は2012年に1ZBへ到達し、以後は企業データとIoTデータが急増した。スライドでは、2025年時点の情報量を191.40ZBとし、2035年には1,459.80ZB規模へ伸びる見通しが示されている。このことから大野氏は、こうした基盤条件がそろったことで「第四次産業革命は概念ではなく、すでに実装フェーズに入った」と語った。
企業の動きも同じ方向だという。Amazonは2025年6月、Agentic AIを活用した庫内ロボットを発表した。Walmartは同年9月、従業員約210万人の総数を3年間横ばいで維持しつつ、AI教育で職務転換を進める方針を公表した。さらにAmazonの内部文書報道では、2033年までに売上倍増を見込みながら、75%の業務自動化と2027年までに40億ドル規模の効率化余地が取り沙汰された。大野氏は「予言を当てることより、準備を終える時期を先に決める方が経営として合理的だ」と話し、変化の速度に合わせた意思決定を求めた。
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