万博「健康技術」進む実用化 パソナは軟骨伝導イヤホン 電気刺激で塩味強く感じる機器も
大阪・関西万博で紹介されたウェルビーイング(心身の健康や幸福)に関する技術を、社会で実用化する動きが活発化している。パソナグループは1日、耳の軟骨に振動を伝えて音を聞く「軟骨伝導」イヤホンの事業化を発表。他にも、食事制限がある人も料理を楽しめる技術や遠隔医療などの普及が期待されるが、事業主体は小規模の企業も多いため、大企業や行政との連携が鍵となる。
「パソナのネットワークをフル活用し、軟骨伝導技術の社会実装を加速したい」。同社の若本博隆会長は1日、軟骨伝導イヤホンの事業化発表会で、このように語った。
軟骨伝導イヤホンは、音楽プレーヤーなどの音を耳の周辺に当てた「振動子」で体に伝え、耳の軟骨を振動させることで耳の中の「外耳道」で音が生成される。それが鼓膜などを通り、脳が理解できる信号に変換して聴神経へ送る「蝸牛(かぎゅう)」に届くためクリアな音声が伝わる。
万博のパソナ館ではスタッフ用インカムに採用し、周囲に騒音などがあっても業務連絡できることを確認していた。
万博のウェルビーイング技術が続々と実用化されている。UBeing(名古屋市)の電子機器は、顎周辺に触れる端末から微弱な電気刺激を流すことで食材の塩味やうま味などを強めに感じられるため、塩分控えめや薄味の料理でも満足感が得られる。大阪府のほか、愛知県や三重県でも実用化が進む。
OUI(東京)は、スマートフォンに機器を装着し、遠隔で目を診察できる製品を投入。国内約120の医療機関などで導入されている。清水映輔最高経営責任者(CEO)は「離島や途上国だけでなく、企業健診に眼科の専門検査を組み込むことで早期の発見・治療につなげたい」と話す。
イヴケア(大津市)は、毛髪などの生体情報をもとに心身の状態を可視化し、メンタルヘルスや未病対策につなげることを目指す技術を考案。2028年の実用化に向けて研究開発を進めている。万博で生まれた関心を、導入先の開拓や共同研究、エビデンスづくりにつなげられるかが今後の焦点になる。
こうした技術の実用化について、りそな総合研究所の荒木秀之主席研究員は「社会に必要であり、歓迎すべき動きだ」と評価。一方で、実用化の成否は企業の規模や投資ができるかどうかの余裕にも左右されるとし、「社会として戦略的に導入すべきだろう。技術が十分に生かされないのは社会損失ともいえ、地域一体の取り組みを期待したい」と述べた。(桑島浩任)
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