被爆の記憶 継承多様化 AI対話、VRで追体験…平均86歳、迫る「被爆者なき時代」

 広島は6日、米国の原爆投下から81年となる「原爆の日」を迎えた。被爆者の平均年齢は86歳となり、刻々と「被爆者なき時代」が近づいている。世界では核の脅威が高まっており、唯一の戦争被爆国として、81年前の記憶継承が大きな課題となっている。

AIで被爆者と対話できる装置(広島市提供)

 被爆地の広島と長崎では、本人に代わり当時の体験を語る「伝承者」養成の事業が進むほか、人工知能(AI)で被爆者と対話できる装置や原爆投下の惨状を追体験できるVR(仮想現実)ゴーグルの開発など継承のあり方も多様化している。

 全国で被爆者健康手帳を持つ人は3月現在で9万1105人。保有者がピークだった昭和55年度末の約37万2000人の2割近くまで減った。

 広島市では平成24年度から本人に代わり体験を伝える「被爆体験伝承者」、令和4年度から子や孫が語り継ぐ「家族伝承者」の養成を進めている。伝承者は体験者と面談を重ね、当時の状況や平和への思いを受け継ぐ。現在、2~3年の研修を受けた体験伝承者264人、家族伝承者48人が学校などでの講話活動を行っている。

被爆者である廣中正樹さんの記憶を語り継ぐ被爆体験伝承者の大島敦子さん=7月30日、広島市中区の広島国際会議場

目に涙「どうか伝えてほしい」

 栃木県下野市の通訳業、大島敦子さん(50)も養成を受けている一人。原爆で父親を失い、自身も爆心地から3.5キロで被爆した廣中正樹さん(86)の記憶を引き継ぐ。

 体験者に代わって語り継ぐ重みに、大島さんは「果たせるだろうか」と疑問を抱いたこともある。今こうして研修を続けるのは廣中さんのため。普段はにこやかだが、当時のことを話し出すと、目に涙をため「どうか伝えてほしい」と繰り返す。

 完成した講話の原稿は約9800字。廣中さんの前で初めて原稿を読み上げると「昔を思い出した」と言ってくれた。

 広島市は昨年、映像上の被爆者とAIで疑似対話できる装置を製作。修学旅行生の平和学習などで利用されている。また、CG(コンピューターグラフィックス)で再現した被爆前後の広島の街を疑似体験できるVRゴーグルの貸し出しも行っている。

 戦争の記憶継承について研究している京都大教育学研究科の福間良明教授(戦争社会学)は「被爆の記憶を継承することが重要と当たり前のように語られるが、そもそも何のために継承するのかを一人一人が考え、行動に変えていくことが重要だ」と話す。(中井芳野)

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