予算がついても、製品を入れても止まる――ゼロトラストを止めている「組織摩擦」の正体(2/2 ページ)

摩擦を、係数にする

 根性論型、属人型に続く、3つ目の語り型として提案したいのが、摩擦を係数にすることです。名前は「組織摩擦係数」。

停滞を語る3つの型 図2:停滞を語る3つの型――根性論型・属人型・係数型

 材料は4つだけで、変革を重くするものが縦割りとレガシーの2つ、変革を前に押すものが危機感と変革意志の2つです。重さを推進力で割れば、その組織がどれだけ動きにくいかが1つの数字になります。具体的にどういう計算式で、これらをどう測るのかの説明は、次回に回しましょう。

 この係数の限界も、先に申し上げておきます。これは統計調査から推定した数値ではありません。当方が現場で繰り返し見てきた停滞の型を、Kotterの変革論を下敷きにモデル化したもので、算出のもとは設問への自己申告です。床の状態は会社ごとに違うので、隣の会社の床と数字を並べても意味はありません。測り直す相手は半年後の同じ床で、見るべきは滑りがよくなったか悪くなったかの差だけです(数字が出るとつい隣と並べたくなるのは人情なので、この一文は第2回でも繰り返します)。

明日、会議室で試せる3つの問い

 係数の話は次回に回すとして、自社の停滞が本当に「予算と人」で説明がつくのかどうかは、今日からでも確かめられます。

  1. 直近で予算が満額ついた施策は、計画どおりに進みましたか? 進まなかったとしたら、止まったのは予算がつく前ですか、ついた後ですか?
  2. 新しいツールを1つ導入するのに、承認はいくつ必要で、最短で何カ月かかりますか?
  3. この変革が止まったとき、社内で困るのは誰ですか? 部署名ではなく、個人の名前が1人、すぐに出てきますか?

 1で「ついた後」、2で「数えたことがない」、3で「名前が出ない」。そんな答えが並んだ会議室では、予算と人をいくら足しても、荷物はおそらく動きません。

 救いもあります。物理の教科書では、動き出した物体にかかる動摩擦力は、動き出す直前の最大静止摩擦力より小さいと説明されています。一番重いのは、最初の1ミリなんです。

 次回は、その1ミリのために摩擦を式にします。その前に1つだけ考えてみてください。あなたの会社の床は、いまどんな状態でしょうか。

<著者プロフィール>
髙岡 隆佳 (TAKAOKA Takayoshi)

 ゼットスケーラー エバンジェリスト&シニアプロダクトマーケティングマネージャー。

 セキュリティ業界で25年以上、250社を超える実装現場に携わっている。DBSCではワーキンググループリーダーとして、経済産業省の参考資料となったデータベース暗号化ガイドラインや内部不正対策ガイドラインに貢献。CSAでの活動を通じて「真のゼロトラスト実装」を提唱し、「ゼロトラスト負債(ZTD)」「組織摩擦係数」など、日本のセキュリティが抱える構造問題に名前をつけ、経営を巻き込んだセキュリティ投資の根本改善を働きかけている。

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変革の停滞を打ち破る!社内を円滑に動かす「組織摩擦」の公式

技術を伴う変革や移行が予算や技術の問題ではなく、「組織の摩擦」によって停滞している企業は少なくありません。本連載では、250社以上の実装を支援してきた筆者が、この目に見えない停滞要因を「組織摩擦係数」として可視化し、変革を阻む壁を打ち破るための具体的なアプローチを全5回にわたって解説します。

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