セキュリティ・パートナーの流儀
「投資」を変えたら経営に響いた 250社超の支援で見えた「ゼロトラスト負債」 - Zscaler 髙岡氏(1/2 ページ)
ゼロトラストを掲げた企業が、SASE(Secure Access Service Edge)やZTNA(Zero Trust Network Access)、多要素認証(MFA)を導入する。PoC(概念実証)も終えている。それでも「自社はどこまで進んだのか」と聞かれると、答えられない。Zscalerの髙岡隆佳氏は、そうした状態を「ゼロトラ迷子」と呼ぶ。
髙岡氏はセキュリティ領域で25年の経験を持ち、Zscalerではアーキテクトとして6年間で250社を超える企業の変革支援に携わってきた。そこで見えてきたのは、技術を導入するだけでは変革が進まない企業の姿だった。
なぜ、正しい技術を入れても前へ進めないのか。顧客と向き合う中で生まれた「ゼロトラスト負債」という言葉から、髙岡氏の流儀を追う。
髙岡隆佳(TAKAOKA Takayoshi)
――ゼットスケーラー株式会社 エバンジェリスト&シニアプロダクトマーケティングマネージャー
1999年にネットワークSEとしてキャリアを始め、ファイアウォール、データ、プロキシ、エンドポイント、クラウドなど幅広いセキュリティ領域を経験。Zscalerではアーキテクトとして企業のゼロトラスト移行を支援し、2026年5月からプロダクトマーケティングも担う。
「飽き性」が25年のキャリアをつないだ
髙岡氏は自分を「飽き性」と評する。
「飽き性だから、同じことをやりたくないんです」
長く活躍するエバンジェリストにも、変化を楽しむ人が多いと髙岡氏は話す。セキュリティ領域で25年。ただし、同じ場所にとどまってきたわけではない。時代ごとに主戦場を移しながら、扱う技術を変えてきた。
出発点は、セキュリティとは関係のないところにあった。大学で学んだのは生物学で、ITの知識がほとんどないままネットワークSEになった。派遣先は、携帯電話の最新技術を研究する施設だった。研究者を相手に、一夜漬けで仕込んだ技術を説明し、検証し、提案する日々を送った。
新入社員時代に上司からかけられた「SEなら、自分の得意分野を1つ持て」という言葉が、その後も頭に残ったという。
「その1つが、たまたまセキュリティだったんです。ファイアウォールの担当になったこともあり、セキュリティのビットが自分の中に立ったのかもしれません。全ては運かもしれないですけど、それが自然に今の自分へのパスになっているなと思います」
担当したのは、当時登場したばかりのNetScreenのアプライアンスだった。大手の顧客に提案が刺さり、技術の価値を訴求する面白さを覚えた。
情報流出とPCI DSSが問題になった時期にはデータセキュリティのSafeNetへ、標的型攻撃と多層防御の時代にはプロキシを手がけるBlue Coatへ移った。同社は後にSymantecに買収され、髙岡氏はエンドポイントやデータ保護までを扱うようになった。特定の製品や1つのレイヤーにとどまるのではなく、その時々で必要と考えた技術を選んできた。
この積み重ねは、現在の仕事にもつながっている。ゼロトラストの移行を考えるときには、ネットワークだけでなく、認証やエンドポイント、アプリケーション、データ、運用まで見なければならない。意識してはいなかったが、「全域でインフラのコンサルティングをするための土壌が、オールレイヤーで築かれていた」。髙岡氏はそう振り返る。
顧客の要望をそのまま受けないのは「うそをつきたくない」から
髙岡氏が仕事の信条として挙げるのが「顧客至上主義」だ。ただし、それは顧客から出てきた要望をそのまま受け入れることではない。
「うそをつきたくないんですよ。取り繕わなければいけないことはしたくない。正しいものを正しく伝えたいだけなんです」
この考え方は、所属するベンダーの選び方にもつながっている。髙岡氏は、どのベンダーにいたときも「自分が売りたいから」ではなく、その時代に正しいと考える技術を顧客へ届けたいという動機で動いてきたと話す。仮に所属する会社が顧客にとって良いものを提供できなくなれば、別の会社に移ることも考えるという。
正しいと思える技術を持つ場所にいるからこそ、自分もその技術に触れ、価値を顧客へ伝えられるのだ。
「最新のテクノロジーに触れられますし、バリューをちゃんと伝えられる。それは当然、自分のバリューにもなります」
Zscalerで続けてきたアーキテクチャワークショップの進め方も、この考え方の延長にある。6年間で対象は250社を超えた。1回1.5〜2時間ほどの議論を週次や隔週で繰り返し、1社に2〜3カ月かける場合もある。プリセールスの一環として行う取り組みだが、製品説明だけで終わるものではない。
個別の製品要件から始まった相談だったとしても、その周辺で何が起きているのかまで、ワークショップの範囲を広げる。髙岡氏は、顧客にとってどの程度の成熟度が適切なのか、過剰投資にならないか、運用が破綻しないかまで含めて考えるという。
「相談が現場だけの狭い話だったら、むしろスコープを広げるんです。会社として何を目指しているのか、それにどう貢献するのか。インフラやセキュリティ部門だけの視野ではなく、開発部門は何を考えているのか、データの流れはどうなのかまで見ます」
IDの認証を強化したり、VPNを置き換えたりしても、別の場所に暗黙の信頼や例外的な経路が残っていれば、どこかをやられた時点で結果は同じになる。だから髙岡氏は、製品を入れることを目的にしない。そのためなら、最初に示された要件そのものを問い直すこともあるという。
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セキュリティ・パートナーの流儀
高度化・巧妙化するサイバー攻撃に対抗するには、最新のテクノロジー導入だけでは不十分であり、それを支える高度な専門知見を持った「パートナー」の存在が不可欠です。優れたソリューションの背後にいるプロフェッショナルたちは、どのような想いで顧客に寄り添っているのか。本連載では、第一線で活躍するパートナー個人に焦点を当てて紹介します。
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