「売り残しても売り逃すな」はもう古い――環境経営時代に適応した“ロス”の新概念(後編)トレンドフォーカス(1/2 ページ)

従来の原価管理システムの限界を補い、資源消費削減とコスト削減の両面で原価管理を行う「マテリアルフローコスト会計」の関心が高まっている。ただ、管理手法として継続的に導入するためにはいくつかの壁がある。

» 2008年03月07日 09時01分 公開
[富永康信(ロビンソン),ITmedia]

 管理手法としてマテリアルフローコスト会計(MFCA)を継続的に導入するためには、いくつかの壁がある。その1つは、MFCAと通常の管理手法で定義するロス概念の相違だ。

 MFCAではインプットとアウトプットの差異をロスとして、在庫や遊休設備はロスとはしないが、一般の管理手法では、獲得できたであろう収益が獲得できなかった場合にロスとなり、インプットとアウトプットの差額が収益で補えられればロスと考えない。しかし収益となっていない在庫や遊休設備はロスとなる。

 これらロス概念の相違への対処法として、神戸大学大学院経営学研究科教授の國部克彦氏は、インとアウトの差額をロスと認識するようにし、収益の獲得可能性とは関係なく資源ロスをロスと識別することや、その管理責任の範囲を拡大すること、また収益機会逸失とMFCAロスとを無理に統合せず、両方を併用させることによって経済効率と環境配慮までをカバーする仕組みを作ることなどが重要だという。

 壁のもう1つは、資源ロスコストの削減を原則としたMFCAと、利益の最大化を目指す経済行動原則とが食い違うこと。コンビニやファストフードなどは、“売り残しても売り逃すな”を原則として、欠品による販売機会逸失の削減を最優先する。このような非環境的な経済行動の中にMFCAをどうやって組み入れるか、企業の経済目標との調和が課題となる。

 これについても國部氏は「生産管理の手段であると同時に環境管理の手段でもあるMFCAには、長期的に効果を生み出す努力が企業に求められる。そのための方法として、ロス削減の計画を立てて達成していくことにより、CSR報告書などでMFCAへの取り組みを明記することができれば、社内外のステークホルダーも評価し、支援する仕組みが作れる」とアドバイスする。

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