2010年の財界団体および大手企業のトップの年頭所感では、アジアをビジネス上の重要地域とする内容が多く見られた。
最悪期からは抜け出しつつあるものの、円高やデフレの進行による景気の「二番底」に警戒感が強まる2010年の日本経済。日本を再び成長軌道に乗せるためにはアジア諸国とのかかわりは無視できない。
日本経団連の御手洗冨士夫会長は「グローバル化が加速する中で経済成長を図るためには、経済連携協定などによる経済統合の動きをアジアから環太平洋へと広げるとともに、アジアのインフラ整備にも積極的に協力し、アジアの中でわが国も共に成長して行く視点が欠かせない」と強調する。
少子高齢化などによって日本の内需拡大が今後見込めない中、急成長を遂げているアジアを中心とした新興国市場の取り込みが不可欠だ。「日本企業の有する優れた技術力を生かし、低価格帯のみならず高付加価値商品・サービスへの潜在需要を喚起し、日本企業にしかできない市場創造を図るべき」と経済同友会の桜井正光代表幹事はアジア市場攻略に向けた日本の強みを語る。
大手旅行会社のジェイティービー(JTB)は、中国を中心としたアジアからの人材流入を重視し、グループ内に「アジア戦略推進室」を新たに組成する。田川博己社長は「日本が誇る“おもてなし”の精神を持って、国の政策と連動し観光立国推進の一助となるよう役割を担っていきたい」と意気込む。少子高齢化という課題に対して、不動産大手の森ビル・森稔社長は「アジアを積極的に取り込み、観光だけではなく海外の人々が実際に住み、働く都市づくりを進めることで、東京の活性化に貢献していきたい」としている。
一方で、アジア企業は日本企業にとって強力なライバルにもなり得る。全日空運輸の伊東信一郎社長は「中国を含むアジア諸国の高い成長、それをにらんだ世界中の企業のアジア進出の動きなど、今後は経済のボーダレス化がさらに進む中で、アジアや世界と競争し勝っていかなければならない」と気を引き締めた。
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明治学院大学 経済学部准教授