言葉の耐えられない軽さ藤田正美の「まるごとオブザーバー」(1/2 ページ)

言葉を重要視せず、その場限りの言い繕いに終始していては、国民の信頼は得られない。

» 2010年12月06日 15時51分 公開
[藤田正美,ITmedia]

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 柳田稔法務大臣が辞任した。地元での大臣就任祝賀パーティでの「軽口」がたたって、とうとう辞任に追い込まれた。補正予算案を「人質」に取られる時期だったというのが不運と言えば不運だが、それにしてもテレビカメラの前でしゃべるには内容がお粗末すぎる。いかに冗談とはいえ、国会での質問には2つの決まり文句があればいいと言ったのだから、野党が見逃すはずはない。

政治家にとって言葉は命

 もっとも柳田氏だけを責めるわけにもいくまい。民主党政権は何せ「失言」の多い政権だという印象がある。鳩山首相は発言が迷走し、とうとう自分の言葉で自分の首を絞めてしまった。しかも総理大臣の地位を棒に振っただけではなく、国まで危うくしてしまった。普天間基地移設問題で日米関係はギクシャクし、中国とロシアから領土問題で攻勢をかけられるスキをつくった。

 本来、政治家にとって言葉は命と言っても過言ではない。政治家の仕事は利害の調整であり、そのために必要なのは人々を説得するスキルである。しかも、あるべき社会に関する自分のビジョン(あるいは党や内閣のビジョン)に基づいていなければならない。ビジョンなしに調整すれば、無原則的な妥協になるか、あるいは無理矢理押し通すかしかない。

 その意味で民主党で最も気になるのは、閣僚たちの失言よりも、マニフェストなどの「食言」である。「国の予算を精査すれば20兆円ぐらいは簡単に出てくる」と言っていたのはどうなったのか。鳴り物入りの事業仕分けもすっかり色あせて、最近では財源を期待しないで欲しいなどと予防線を張る始末。財源がないために子供手当は「現物支給で」などと強弁する。積み上がる赤字をどうするのか、財政再建の道筋はどうなっているのか、何ら明らかにできないままに2011年度予算を組まざるをえなくなっている。

 さらに、政治の透明性を確保するという意気込みは今ではすっかり消えてしまったかのように見えるのもおかしな話だと思う。そういうと「事業仕分けは予算を国民の目にさらしているのであって、これ以上の透明性はない」と反論されるかもしれない。それならば、事業仕分けの議論の過程が文書として公表されない理由がわからない。

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