藤田正美の「まるごとオブザーバー」
日本完敗、中国は? (1/2 ページ)
藤田氏のコミュニティーまるごとオブザーバーはこちら。
尖閣諸島付近で操業していた漁船の船長が海上保安庁の巡視船に体当たりをして逮捕された事件。これをめぐって日中関係は急速に悪化していた。中国政府は丹羽大使を深夜に呼びつけるなど、激しい抗議を繰り返し、船長の即時無条件釈放を要求した。
さらにガス田の共同開発をめぐる交渉を延期、閣僚級の往来を停止、航空路線増便の交渉中止、と矢継ぎ早に手を打ってきた。さらには日本への団体旅行を中止した中国企業やら、日本のゼネコン社員4人が中国で軍事区域に「侵入」したとして逮捕される事件まで起きている。結局、那覇地検は船長を処分保留のまま釈放することを決定。菅政権は「検察の総合的判断でそれはそれで了とする」(仙石官房長官)として、幕引きを図る意向のようだ。
それにしても、中国側の対応は常軌を逸していると思う。大使を呼んで抗議するのは理解できるとしても、次々と対応をエスカレートさせたばかりか、中国から日本に向けて出荷されるはずのレアアース(希土類)を税関が差し止めたという(貨物が止まっていることは事実だが、船長逮捕事件との関連は確認されていない)。さらに対抗策として円を買って円高に誘導するという提案もあったようだ。
一方的に圧力を高める中国政府に対して、日本側はほとんどなすすべがなかったように見える。もちろん「国内法に従って粛々と手続きを進める」というのはその通りであって、それ以上でもそれ以下でもない。しかし問題は、船長の釈放に当たって外交的な判断を検察当局がしたかのような発言をしたことである。検察当局がそんな判断をすること自体、おかしな話だし、政権が検察に指示したのなら、そういうべきだと思う。もちろん政権の判断をめぐって国内からそれなりに厳しい反発が出るだろうと思うが、そこは政権としてどう考えたのかを説明すればいい。結果的に、政権としての判断を逃げたように見える。
ことは外交の問題だから、どのように見えるのかということが極めて重要だ。第三者的に見ても、今回の一連の流れを振り返ると、中国がどんどん圧力を強める中で、結局は日本が屈服したように見える。圧力を強めれば結局は「折れる国」というレッテルが貼られれば、国にとってプラスになるはずがない。
ただこれで中国の全面勝利というわけでもないだろう。とりわけ中国が対日輸出を差し止めたという行為は、たとえそれが中央政府の指令によるものではなくても、中国は政治問題を冷静に解決しようとはせず、経済的な強硬手段を使っても自国の意思を押し通そうとする国というように受け取られる。こうなると中国にある資源を依存するということは、それだけで中国に弱みを握られることを意味する。こうなると中国と安心してビジネスを展開しようという企業が少なくなるはずだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
ITmedia エグゼクティブのご案内
「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。 勉強会のスケジュールはこちら
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入して申請ください。審査のうえ登録させていただきます。
- 入会条件:
- 上場企業および上場相当企業の課長職以上
※入会は無料です
エグゼクティブコンテンツ
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
スキルの向上だけでは成長は望めない――より重要になる「成長マインドセット」とは
-
2
「CISOは1人の経営者たれ」――ログの先の人を思う、LayerX CISO 星氏
-
3
ITmedia エグゼクティブ勉強会スケジュール
-
4
「セキュリティは事業を活かす出汁、責任者はCIMOで目指せ」 - JTB 椎野氏
-
5
「人間洗濯機」が高齢者施設に 福祉の現場に万博技術導入 人手不足解消や産業成長に期待
-
6
第50回:なぜ「優秀なマネジャー」ほど経営に嫌われるのか
-
7
本田技研工業のDXはボトムアップとトップダウンで“Hondaらしく推進”
-
8
重要文化財の弁財天像 3Dデータ化で確実に継承へ 「将来に残したい」神奈川・江島神社
-
9
味の素社が挑む“dX”とAI駆動開発――“企画・開発・営業ができる人財”が新規事業を加速する
-
10
話題のチーズティーを飲んでみる
ITmedia エグゼクティブ SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaエグゼクティブをフォロー