先日開催された「NTT DATA Innovation Conference 2012」においてNTTデータ 山下社長が「変える力、ともに生み出す。ビジネスイノベーション――夢と感動を世界とともに」と題する講演を行った。
「日本は課題先進国」とNTTデータ 代表取締役社長 山下 徹氏は話す。その意味は単に多くの課題を抱えた先進国ということではない。世界の国々があまり経験したことのない先進的な課題に直面しているという意味だ。
「少子高齢化、インフラクライシス、超円高。この3つがその代表的なものである。2012年、昭和22年生まれの団塊の世代約600万人が65歳となり、15歳以下の世代層が数年のうちに全人口の10%を切ってしまう。1960年代以降、急激に建設された近代的な社会インフラも老朽化し大規模な補修、再建が必要となっている。そして世界有数の製造業企業を擁する先進国として未曾有の自国通貨の高騰にさらされている。こうした逃げることのできない先進的な課題を抱えている国は日本以外には見当たらない」(山下氏)
しかし、課題が先進的であるからこそチャンスが生まれると山下氏は話す。例えば少子高齢化の進展は、介護、保育市場の巨大化をもたらし、ITを用いた新たなサービス・ソリューション開発の土壌となる。少子高齢化へと進むのは日本だけではない。日本の後を追うように、中国やドイツ、米国などでも避けては通れない問題となる。先に課題に突き当たった日本は、先進的な介護、保育サービスを輸出できる可能性があるというわけだ。
橋や道路、上下水道などの社会インフラをかつて急速に整備してきた日本では、現在これらのインフラの老朽化に悩まされている。しかし、これらを補修、再建しようにも国や自治体は財政難という問題を抱えており、ある調査によれば7割の自治体が十分な手当ができないでいるという。また、補修、再建に当たる若い人材も不足している。NTTデータでは“BRIMOS”という、橋に設置したセンサーで異常発生をリアルタイム検知する橋梁モニタリングシステムを開発し全国で実装している。こうしたソリューションは、人手不足、資金不足の状況でも効率的にインフラを改修、維持することに役立っている。このシステムは中国など海外でも導入が進められており多くの引き合いを生んでいるという。日本の事情から開発されたITソリューションが世界で活躍しているというわけだ。
日本は現在も円高に悩まされているが、山下氏はITこそ製品やサービスに高い付加価値をもたらすものだと話す。
「コマツの建機のモニタリングシステムなどがその代表例。これによってユーザーは世界中どこで稼働していても、高いレベルのサービスを受けられる。また、ホンダのドライブ情報サービス・ネットワーク“インターナビ”もその1つ。東日本大震災の発生時、ネットワークにつながっている走行車のデータを集積、分析して通れる道とそうでない道を見極めリアルタイムでドライバーに知らせることができました」(山下氏)
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授