悪いのは本当にサブプライム問題か?――景況感悪化の別の理由:景気探検(2/2 ページ)
サブプライムローン問題の全貌がなかなか分からず、暗雲が世界中を覆っているが、日本の株価が大きく下落している要因には幾つかの理由がある。
春先の早めの桜開花に期待
07年12月分の鉱工業生産指数・速報値は前月比1.4%増と2カ月ぶりの増加になった。指数水準は111.9と史上最高水準であった10月の112.2より低いものの11月分の110.4を上回り、8月分の111.9と並ぶ歴代第2位タイであり、しっかりした数字と言えよう。
しかし、先行き心配な数字がある。製造工業予測指数前月比は1月分が0.4%減、2月分が2.2%減と2カ月連続の減少予想だ。1月分の減少は輸送機械工業、金属製品工業など、2月の減少は電子部品・デバイス工業、電気機械工業などによる見通しである。1〜3月期の生産は前期比マイナスの可能性が出てきてしまった。
先行きの製造工業予測指数の弱さを景気後退シナリオに結びつける向きもあろうが、現状は在庫調整が必要とされる局面ではない。
景気動向指数では、一致DIが12月分は50%超だが、生産の減少で1・2月分が景気分岐点50%割れになるのではという予測も出よう。しかし、一致DIがもたつき始めそうな中、先行DIが改善傾向にある。12月分速報値は在庫率関連データや住宅着工の改善などで40.0%程度になりそうだ。5カ月連続の50%割れにはなるが、直近の月に比べれば、数字はかなり50%に近付きそうだ。さらに、1月分ではこれまでマイナスだった中小企業売上見通しDIのプラス化も確定した。
昨年も生産は1〜3月期は前期比減少であった。今年は4月の2月分確報値発表時に、通常年の年間補正に加えて、今年は5年に1度の基準改定年に当たる。2005年基準への改定が予定されており、その影響次第では、1〜3月期の生産指数・季調値の下支え要因になる可能性がある。
建築基準法改正の悪影響は最悪期を超え今後は薄まっていく局面だ。
桜が早く咲くと日本人の景況感は明るくなる傾向がある。東京の桜の開花日が3月中旬と早い時は1953年以降すべて景気拡張局面である。日本の景況感は春頃になると元気が出てくる可能性が高いとみたい。
たくもり・あきよし
「景気ウォッチャー調査研究会」委員。過去に「動向把握早期化委員会」委員、「景気動向指数の改善に関する調査研究会」委員などを歴任。著書は「ジンクスで読む日本経済」(東洋経済新報社)など。
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いよいよ「日本版SOX法」がスタートする。4月1日以降の開始事業年度から上場企業は「内部統制報告書」を提出しなければならないが、昨秋の内部統制整備の実務的なガイドラインや実施基準案が金融庁から一般公開されたことから、黒船来襲のように右往左往していた日本の企業も比較的落ち着きを見せている。
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