【第10回】疲弊するIT部門(3)〜現場が求めるのは「Do it myself」:三方一両得のIT論 IT部門がもう一度「力」をつける時(2/2 ページ)
急激な経営環境の変化、ビジネススピードが加速する中で現場の人たちはどうやって戦おうとしているのか。今、変化に柔軟で迅速に対応できるシステムが待ち望まれている。これからのシステムこそ、前線で戦う現場の武器となれ。そのために、現場の満足を先読みしたサービスを考えるべきだ。
IT部門の本来の役割とは
これを効率よく報告レポートができるようにするにはどうすればよいのか考えるのがIT部門であろう。
DIM的に言えば、次のような手順である。人は司令塔であり、コンピュータがデータ収集、分析、レポート作成を行う作業部隊という役割分担にすべきである。
- (IT)上海販社の売り上げが計画比を下回っているというアラートを出す
- (IT)アラートをクリック→売り上げ分析画面が表示される
- (IT)分析したい軸でドリルダウン、原因と思われるデータ収集
- (IT)対象商品の売り上げ、在庫推移リスト作成
- (IT)市場、同業他社動向情報検索、データ入手
- (人)原因究明の仮説の設定(ユーザー需要が変化している)
- (人)売り上げ増対策立案
- (人)売り上げ回復策報告レポート作成
- (人)分析結果報告
1〜5までは、シームレスにコンピュータと会話しながら作業が進められるイメージだ。それも、簡単な操作で試行錯誤しながら、納得いく結論に行き着くことができる。これは、一般的に提供されているBIやDWHなどとはものが違うナビゲーション的システムである。その場で課題が解決できるというサービスレベルを基準としている。
現場が満足するサービスとは、このようなバランス、サービスレベルである。現場がシステム要件を出して、IT部門がそれを構築する。このスタイルを全面的に否定はしない。そういう基幹系のシステムも当然ある。しかし、ユーザーニーズが頻繁に変わる要件に対するサービスでは、IT側は仕組みと新鮮なデータを提供すればよい。現場がそれを活用して、簡単に付加価値のあるアウトプットに加工作成する。このような役割分担がもっとも効率的でコストもセーブできるのではないだろうか。
プロフィール
岡政次(おか まさじ)
ウイングアーク テクノロジーズ株式会社 協創企画推進室
三重県出身1959年生まれ。1977年シャープ株式会社に入社。本社IT部門に在籍、10年強の新人教育、標準化・共通システム化を担当。さらにシステム企画担当として、ホスト撤廃プロジェクト、マスター統合、帳票出力基盤の構築等に携わる。2007年4月、ウイングアークテクノロジーズ株式会社に入社。現在、経営・エンドユーザー・IT部門の「三方一両“得”」になるIT基盤構想を提唱し、「出力HUB化構想」を推進する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 「お子様役員」狂想曲――IT導入の本質を見極める
IT導入において、トップとCIOだけではなく、他の各部門役員の存在は、意外に大きなものである。信じられない「奇行」も笑って済ませることはできない。 - 片思いからの卒業――CIOの本来の姿とは
輸入語であるCIOはなかなか日本企業に根付いていない。CIO任命の要諦とは。 - 悪とは言い切れない経営の「えげつなさ」
ビジネスにおける良し悪しの境界線は不透明だ。時には型破りのえげつなさが評価されることもあるという。 - 偽装事件を引き起こす不健康組織16の兆候
「ホウレンソウ(報告・連絡・相談)」ができないのは、社員のスキルではなく、経営者の価値基準に問題があるという。その状況は社内に見られる16の兆候からチェックできる。