【第1回】消費者マーケティングの現在:ブランドの達人が語る(2/2 ページ)
社会が多様化していくことに伴い、商品を選ぶ消費者の視点も変わりつつある。自分自身にとって身近で親近感を持てる存在を好む彼らには、従来のように企業からの一方通行では通用しない。
消費者マーケティングの現在
現在、企業による消費者マーケティングへの取り組みは、業種ごとに大きな温度差がある。
自動車メーカーや化粧品メーカーなど、技術が成熟し品質のクオリティが安定した業界は徹底した消費者マーケティングに取り組んでいる。
その一方、ファッション、メディア、エンターテインメントなど、優秀なクリエイターがプロダクトアウト嗜好(しこう)で商品/サービス開発を行っている業界や、金融や不動産など、全体の景気が良いときは急速に業績を伸ばし、景気の悪化に伴い業績が悪化するような業態も消費者マーケティングに真摯(しんし)に取り組んでいるとは言いがたいのが現状だ。
消費者マーケティングとは何なのか?
マネージメントサイドの観点で言えば、商品/サービス市場導入時のリスクヘッジであり、中長期での業績の安定化に欠かせない取り組みと考えて差し支えないだろう。
現在の消費者が求めるもの
それでは、現在の消費者が商品やサービスに何を求めているか?
多様化する現代社会において消費者は自分自身にフィットするもの、もっと強く言えば自分自身そのものと同化するものを望んでいると近年強く感じている。
例えば地域密着型のマーケティングへの取り組み。
プロ野球では読売ジャイアンツの一極集中型のニーズが崩れ、日本ハムファイターズや千葉ロッテマリーンズなど、地域密着型のスポーツチームが人気だ。「自分⇔自分の街⇔自分の街にあるチーム=自分自身」という同化。
若年層では百貨店離れから、セレクトショップやアウトレットモールに購買チャネルを移している。ある大手セレクトショップのMD担当者に話を聞いた際、そのセレクトショップではすべての店舗の作り方(コンセプト)と品揃えを変えていると聞いた。自分の街にしかないショップ、そこでしか買えない商品(ショップブランドは全国展開されていたとしても)に満足感を覚える消費者。
大量消費・大量生産の時代が終わりを告げ消費者が成熟された日本。消費者マーケティングなくして次代のマーケットは切り開けないだろう。
プロフィール
坂井光(さかい ひかり)
ブランドデータバンク株式会社代表取締役
1973年1月30日生まれ。東京都出身。株式会社西武百貨店を経て、1997年株式会社ウォータースタジオ取締役に就任。2005年4月より現職。株式会社ネットマイル、チームラボ株式会社と業務提携を行い、一般生活者3万人の持物/嗜好状況をデータベース化し、Web上で閲覧できるASPタイプのマーケティング・サービス「ブランドデータバンク」をリリース。導入実績は国内大手メーカー、大手広告代理店を中心に90社超(*2008年6月現在)。ブランドデータバンクのサービスをベースに、大手企業向けにマーケティングコンサルティングも行う。
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