あの人と、なぜ意見が食い違うのか?:問われるコーチング力(2/2 ページ)
「どうして彼はわたしの考えを分かってくれないのだろうか」――。他人と仕事をする上で、誰もが一度は経験することである。これは決して相手に問題があるのではなく、あなたの勝手な思い込みで人物像をつくり上げているからだ。
価値観の共有が強い組織をつくる
「あなたは何のために仕事をしていますか?」という質問に対し、上記12の価値観の順位づけをしてもらえば、個人の価値観を知ることができる。ここで注意しなくてはいけないことがある。それは「他人の価値観を否定しない」ということだ。
この価値観は、個人の置かれている状況によって変わってくる。分かりやすい例で言うと、両親やパートナーが病気になったりすると、「家族」の価値観が急に高くなったり、あるいは子供の教育でお金が必要なときには「金銭」が価値観の上位に現れたりする。
そしてもう1つ。あなたとまったく同じ価値観を持った人が、あなたの周りにいる確率は極めて低い。この事実を理解し、他人の価値観を否定せず、受容することが重要だ。
さらに、ビジネスである限り、組織が発展していくことが必須課題である。「組織が発展するために必要な価値観」について、メンバーと一緒にディスカッションすることをお勧めする。組織の価値観として上位3つを共有できたならば、それは強い組織の土台となる。
あなたは、メンバーの仕事に対する価値観をどれだけ知っているのだろうか。そもそも、あなたは何のために仕事をしているのだろうか。
新年度、新人が入ってきたこの機に、この価値観リストを使って皆でディスカッションしてみてはどうだろう。今まで知らなかった、メンバーの思いや考え、背景が見えてくるかもしれない。そうなると、「意見の食い違い」ではなく、「建設的な意見の積み上げ」ができるものと確信している。
プロフィール
細川馨(ほそかわ かおる)
ビジネスコーチ株式会社代表取締役
外資系生命保険入社。支社長、支社開発室長などを経て、2003年にプロコーチとして独立。2005年に当社を設立し、代表取締役に就任。コーチングを勤務先の保険会社に導入し、独自の営業システムを構築、業績を著しく伸ばす。業績を必ず伸ばす「コンサルティングコーチング」を独自のスタイルとし、現在大企業管理職への研修、企業のコーポレートコーチとして活躍。日経ビジネスアソシエ、日経ベンチャー、東商新聞連載。世界ビジネスコーチ協会資格検定委員会委員、CFP認定者、早稲田大学ビジネス情報アカデミー講師。
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