業務は自動的に改善されず、強い意思を持った人の手で
成熟期に入りつつあるSOA市場。日本企業が取り組む上での心構えをガートナー ジャパンの飯島公彦バイスプレジデントが説いた。
調査会社のガートナー ジャパンは7月15日、16日の2日間、EA(エンタープライズアーキテクチャ)、BPM(ビジネスプロセス管理)、SOA(サービス指向アーキテクチャ)の最新トレンドや現状の課題などを紹介するイベント「SOA サミット 2008」を都内で開催した。初日の基調講演では同社の飯島公彦バイスプレジデントが登壇し、日本企業がSOAを推進する上での留意点を述べた。
「今後3年間で日本でもSOAの導入企業は3割を超えてくる」――飯島氏によると、現在既にSOAに取り組む(あるいは完了した)企業は1割程度だが、徐々に成熟期に向かいつつあるという。成功企業は具体的な効果を挙げ、経験を積み重ねている状況にある。一方で、失敗している企業は具体的なビジネスシナリオの欠如やスキル不足、意思の弱さが目立つ。飯島氏は「SOAやBPMなどの企業改善活動をきっかけに、企業格差が広がっていく」と強調した。
それではSOAの成功のポイントは何か。飯島氏はマネジメント層のリーダシップの必要性を説く。企業変革は1日で行うことは不可能であり、段階的に進めていくことが重要となる。そこで将来の青写真を描き、事前にガバナンスのリスクを考えることがマネジメント層に求められる。
「SOAへの取り組みは、いったん走り出したら止まらない。まず初めにBAM(ビジネスアクティビティモニタリング)などで業務プロセスやパフォーマンスを可視化し、現状の問題や改善点を把握すべき」(飯島氏)
ベストプラクティスといった先行事例をあてにするのでなく、自らが主体的に取り組むことも不可欠だという。飯島氏は「SOAやBPMを適用すると自動的に業務プロセスが改善されるのではなく、人自身がそのための設計を確立するのである。SOAを推進するには、依存性をなくし、企業として強い意思を持ちコミットメントしていくことが重要だ」と力を込めた。
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