日本企業のグローバル経営を阻害するボトルネックとは?
企業がグローバルで事業展開する上で大きな課題となっているのが、各拠点ごとにバラバラに存在する組織やシステムをいかに共通化するかである。とりわけ日本企業は文化的な要因からハードルがさらに高まるという。
アビーム コンサルティングは8月6日、国内企業を対象に実施した「グローバル最適経営」に関する調査の結果を発表した。日系企業は戦略面や組織面での課題がグローバル化に向けて大きな障壁になっていることが明らかになった。
同調査は、2008年2月から4月にかけて、日系のグローバル企業13社(東証一部上場)と外資系グローバル企業4社のCIO(最高情報責任者)またはIT部門長を対象にインタビュー形式で行ったもの。全17社中14社は製造業で、エレクトロニクスが最も多く4社、次いで自動車関連が3社であった。
アビームは、企業のグローバル化の度合いを示す指標として「拠点分散」「リージョン集約」「グローバル統合」「グローバル最適」の4つのステージに分類している(図1)。17社のうち、拠点分散は3社、リージョン集約は10社、グローバル統合は4社となり、グローバル統合はすべて外資系企業であった。グローバル最適に該当する企業はなかった。
成功企業の共通点とは
調査によると、多くの日系企業では事業や地域ごとにIT基盤やビジネスプロセスが異なるという現状を問題視しており、プロセスの標準化に取り組もうとしているという。しかしながら、トップダウンで改革を進められない、グローバル最適に向けたビジョンが全社で共有されていない、役割や権限が明確でないなど、戦略的、組織的にさまざまな課題を抱えていることが分かった。
一方で、グローバル統合が進む外資系企業はどうか。経営戦略研究センターでディレクターを務める木村公昭氏は、オラクルとP&Gを例に説明する。両社ともかつては国や地域ごとに異なる組織、プロセス、ITシステムが存在していた。オラクルは、グローバルでプロセスを標準化するために、購買や会計など各プロセスごとにオーナーを置いて強い権限を付与した。P&Gでは、グローバル経営を推進する部門を立ち上げるなど組織の再編成を行った。木村氏は「両社に共通するのは、トップダウンのリーダーシップで改革を遂行したことや、ビジネスプロセスの標準化と集約化に注力したことである」と強調した。
日本特有のボトルネック
では果たして、日系企業も同じ方法でグローバル最適を図ることができるか。プロセス&テクノロジー事業部 プリンシパルの原市郎氏は「日本企業にはトップダウンの改革が進みにくい文化があり、それがボトルネックになっている」と述べた。そこでITやプロセスといった仕組みを改善することで、結果として戦略や人、組織体制を変えていくというボトムアップ型の改革が日本には好ましいという。
具体的にはグローバル最適に向けた3ステップを考案する。まずはバラバラに構築されたITシステムを統合し情報の可視化を行う。これにより、関係部門による連携の仕組みが機能する。次にプロセスやデータの標準化を進めるために、それを維持する組織や部門を編成し、プロセスオーナーを設置することで、継続的な改善を推進する責任の所在を明確にする。最後に、標準化されたプロセスを「サービス」として整理し、共通基盤を確立する。
この考え方はグローバル企業に限らず、国内で複数拠点を持つ企業でも有効だという。
「(グローバル最適に向けて)経営トップ主導による取り組みは確かに必要だ。しかし、日本では戦略や組織などを一気にトップダウンで変えるのは難しいため、部分的にてこ入れしていくことが望ましい」(原氏)
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