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低炭素時代の発電とデータセンターのあるべき姿とは(前編)トレンドフォーカス(2/2 ページ)

東京電力は、発電でCO2を排出する事業者であると同時に、大規模なデータセンターを運営する事業者としてもCO2を排出する両方の立場にある。低炭素時代の発電とは何か。さらには、最近のデータセンターにおける電力消費の急増に対する模索が続く。

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再生可能エネルギー開発が課題

 ただし、原子力発電比率が8割、水力発電が1割を占めるフランスや、水力が6割、原始力が1割のカナダなどは圧倒的に低く、これらの国と比べると日本はあまりエコ大国といえる立場にはないようである。

 清水氏は、「そうはいっても、1年間での停電時間を比較すると、日本はたったの3分であるのに対し、フランスは45分、米国は69分、イギリスに至っては73分も停電しており、復旧まで長時間かかっている。日本は35年にわたって停電を回避する努力を続けてきており、データセンターへの電力供給の信頼性や安定性という面では誇れる品質環境にある」と胸を張る。

 とはいえ、夏場の電力逼迫はここ毎年の風物詩のように伝えられており、本来安全であるはずの発電所付近に活断層が見つかるなど、CO2を抑制しながらの電力の安定的供給にはさまざまな課題が残っている。

 現在、東京電力では、原子力以外のクリーンな発電方法として、風力、地熱、太陽光、リサイクルといった多角的な方法で再生可能エネルギーを開発しているが、これらについてもさまざまな制約があり、実現には問題が多いという。例えば、原子力発電廃止政策をとるドイツのように、仮に原子力発電所の原発1基分の発電能力を風力発電に置き換えようとすると、東京の山手線内の3倍以上の土地にあの巨大な風車を敷き詰めて設置しなければならず、代替エネルギーとしてあまり実現性が高いとは考えられない。

 清水氏によると、東京電力における現状の再生可能エネルギーの発電量は、火力、電子力を含めた現在の発電総量の1%にも満たないのだという。「ですが、さらに効率を向上させるなり、新たな方法を模索するなり、クリーンな再生可能エネルギーの開発は継続して行っていかなければならないのです」(同氏)


東京電力が取り組む再生可能エネルギー発電施設の数々

データセンターのレッドシフト化

 ところで、IT機器はどれほどの電力が消費されているのか。パソコン、サーバ、プリンターなどを積み上げると、現在の年間消費電力は原子力発電所4基分相当となる約450〜500億kWhだという。また、グリーンIT推進協議会の試算によると、日本におけるIT機器の消費電力は2025年までに現在の5.2倍となり、全国の総発電量の2割に達するという。同じく、世界のIT機器の2025年の消費電力は現在の9.4倍、総発電量の15%に達すると予測されている。

 特に、近年世界規模でサーバの数が爆発的に増加していることが、電力消費量のカーブを異常なまでに押し上げている。サーバのパフォーマンスは、ムーアの法則に従う限りなら、18〜24カ月で2倍のスピードで"順調に"向上するはずだったのだが、クラウドコンピューティングを業とする事業者(Google、Yahoo!、Amazon、Salesforce.comなど)が続々と台頭し、データセンターにおける処理要求が急速に高まった。その結果、サーバの並列処理でパフォーマンスを稼ぎ出そうとするため、データセンターのメインユーザーが大量のサーバパワーを必要とするサービスベンダーに取って代わってしまったのだ。

 この現象について清水氏は、ユーティリティコンピューティングのレッドシフト理論*1になぞらえて「まさに今、データセンターではレッドシフト化が進行している」と警告する。


ムーアの法則を遙かに超えてサーバパフォーマンスの欲求が加速している

 また、最近ではブレードサーバのような高機能・高集積・高密度実装の機器が主流になったことから、データセンターの単位面積あたりの電力消費(電力密度)も増加しているという。ラックマウント型サーバが主流だった頃は、1平方メートルあたり最大1kVA程度だったものが、フレードサーバが普及したことで、1平方メートルあたり3kVA以上へと急増。

 電力密度が増加すると、空調による冷却がことさら重要となり、わずか2〜3分の空調停止がオーバーヒート(40度でサーバ停止)を引き起こす事態にもなっている。つまり、信頼性が求められるデータセンターには空調にも絶対的な信頼性が求められ、そのために冗長化された設備や、空調自体にもUPS(無停電電源装置)が必要となるなど、ますます効率が悪化しているのがデータセンターの現状なのである。

 次回、後編では、東京電力が取り組む最新のデータセンターの効率性について紹介する。


*** 一部省略されたコンテンツがあります。PC版でご覧ください。 ***

 *1 レッドシフト理論(The Red Shift Theory):天文用語の赤方偏移(せきほうへんい)。遠ざかる星からの光を地球上でスペクトル測定すると長波長側(可視光の赤色)方向にずれる現象。それをサン・マイクロシステムズのCTOであるグレッグ・パパドポラス氏がコンピューターの世界に置き換え、ムーアの法則を遙かに超えるような処理要求に応えるため、少数の巨大企業の大規模データセンターがコンピューティング資源を提供することをレッドシフトと称した。




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