低炭素時代の発電とデータセンターのあるべき姿とは(後編):トレンドフォーカス(2/2 ページ)
グリーンITへの期待感が高まる中、都内に大規模データセンターを4基運営する東京電力は、電力会社の強みを活かし、高圧変電所と夜間電力による蓄熱層を備えた設備とすることで、電力消費とCO2排出の抑制を実現している。
地下に超高圧変電所を持つデータセンター
東京電力は、インテックなどと共同でデータセンター事業の「@Tokyo」を運営する。東京23区内の3箇所にTier1〜Tier4クラスの4つのデータセンターを建設し、総面積は14万平方メートル、高度なセキュリティソリューションと冗長化された電源・空調設備、原子力発電所のノウハウを応用した堅牢性などを特徴とする。DCiE値は約55%(PUE換算で1.8)程度となるが、2001年から建設された設備としてはまずまずの効率だ。
@Tokyoのデータセンターの最大の特徴は、複数の送電ルートを確保し、地下60メートル、幅120メートルの空間に置かれた大規模な超高圧変電所の真上に建設されていることから、極めて少ない送電ロスを実現している点である。また、原発で発電された夜間の余剰電力を使用して、摂氏4度まで冷却した5000トンもの水を利用する中央集中型の冷水空調システムも備える。
この蓄熱層は、地域熱供給システム(DHC)としても利用されているという。2008年6月に完成したばかりの最新データセンターの周辺では、データセンターが並んで建設されており、DHCプラントの蓄熱層から地下パイプラインを通って、各ビルが共同で温水、冷水の供給を受けるシステムとなっている。さらに将来的には、データセンターから排出された熱をDHCにフィードバックすることで、周辺地域全体の暖房を支援し、電力の削減やCO2の排出を抑制していく計画だという。
電力供給最適化を図る「グリーン・パワー・データセンター」
また、@Tokyoの現在の4つのデータセンターと、海外のデータセンターを高速通信ネットワークで連結し、国内のキャリアとはVPNサービスを共同で利用し、さらに海外のデータセンターとの高速アクセスを実現することで、複数のデータセンターでのバーチャライゼーションを可能にしたいという。
「これらを総合し、東京電力はデータセンター事業者として機器や空調などを含めたサーバルーム全体の効率化を図り、電源を含めたビル全体の最適化、さらに複数のデータセンター間ネットワークでバックアップやロードバランスによる最適化を図っていく」と語る清水氏。
電力会社の使命として、発電所からITシステムまでを包括した社会システム全体での最適化を目指す「グリーン・パワー・データセンター」構想を立ち上げ、今後トータルにCO2削減を実行していくという。そのためには、他のデータセンター事業者とも協力していくことが不可欠になると清水氏は強調する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.