IT投資、資金不足を口実にする前に知恵を出そう:間違いだらけのIT経営(2/2 ページ)
とにかく多額の費用が発生するという恐怖感から、IT投資をためらう経営者はまだまだ多い。投資した上にシステムが失敗作だった、という他社の事例などを聞けばなおさら足がすくむ。しかし何ごとも知恵と正しい方法論で乗り切れるものなのだ。
SaaSの活用も視野に
しかし、安いシステム、あるいはシステムを安くする方法が、いくらでもある。
IT投資額に何千万円から何億円もかかり、資金力のある企業が有利だった時代は、すっかり過去のものとなった。工夫の方法はある。
まず安いシステムの例として、パッケージソフトがある。例えば、20年ほど前にオフコンベースで数千万円はした経理システムが、今ではパソコンベースで数十万円のパッケージソフトとして提供を受けられる。
さらに、SaaS(Software as a Service ソフトウェアをインターネット経由で提供し、月々使用料を徴収する事業モデル)がある。これは、あらゆる場合に安いとは言えないが、ある条件下では格段に安い。インハウスの従来システムに比べると、ハードウェア調達管理費やソフトウェアライセンス費などの初期コスト・アップグレードメンテナンス費・人件費・設置スペース・空調などが不要または圧倒的に安く済む。他社へデータを預けるのでセキュリティが心配だとも言われるが、自前のセキュリティ対策より安く上がるだろう。
ただ導入後の運用費用などを考慮すれば、企業規模にもよるが2年以上使うとSaaSの方が高いと言われる。その点などからケースバイケースで総合的に判断しなければならないが、多額の初期資金が必要ない、人材不足をカバーできる、導入が早い、ベンダーに煩雑な管理を依頼できる、契約次第だがユーザー数増減に従量制料金で対応できる、最新バージョンソフトが利用できる、など多くのメリットを考えると利用を検討する価値はある。
あるいはテレビ会議を例にとっても、パソコン・webカメラ・マイク付ヘッドフォンで安価なTV電話が構成できる。海外企業相手でも、高額なTV会議システムに投資しなくて済む。
次に、システムを安くする方法である。
まずIT投資の内容を分析して、費用を下げる方法である。IT投資に占める割合で、肝心のハード・ソフトウェアの導入費が20%強、運用費が70%強、システム修復費などが数%と一般的に見られている。最も高い運用費を下げると、IT投資額を低減できる。そのためには、最初のIT戦略・IT導入計画、導入するハード・ソフトウエアの選択などを、運用経費低減を主要テーマの1つとして念頭に置き、長期的視野で立案しなければならない。
また、汎用性の高いソフトを使いこなすと、驚くほど安くなる。定型業務には出来合いの安価なパッケージソフト、固有業務には汎用ソフトを柔軟に組み合わせる工夫がある。
さらに、システム見積をうまく選択すると安くなる。見積の基礎になるITベンダーのエンジニア人月単価は、大手で約100万円、中堅で約70万円、さらに小規模では大手の半分位になる。さらに得意分野を持つITベンダーだと、プログラムの蓄積があるから安くなる。
本当に金がなくて導入しないのか、金がないことを理由に導入したくないのか、真意は不明だが、トップは間違った情報でIT導入は金がかかってどうしようもないと決めつけるべきではない。トップは正しい知識を身につけて、IT導入は高くつくという思い込みを捨て、知恵で勝負をしなければならない。
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