一貫性なくしてビジネスに勝機なし――「経営の真髄」:経営のヒントになる1冊
業務の優先順位付けやリソース配分などが苦手とされる日本のビジネスマン。企業に必要な基礎コンセプトは理解しているものの、経営全体を把握して一貫性のある行動をとらないが故に失敗するという。
常温の流通手段しか持たない食品会社が、まったくコスト構造の異なるチルドや冷凍食品に進出して失敗する。あるいは、コンビニエンスストアやディスカウントストアで高価格品を売ろうとして失敗する。こうした失敗例は、なぜ起こるのだろうか。
それは、経営の一貫性がとれていないからだ。そもそも、企業のビジョンや目標が、実行可能な戦略として描かれているだろうか。そうした戦略は、現場レベルで戦術として展開されているだろうか。さらには、従業員一人ひとりが何をすればいいのかといった行動にまで落とし込まれているだろうか。
経営の一貫性なくして、目標は達成できない。経営に一貫性がないということは、組織のどこかにムダが生じているということだ。せっかく作った販促チラシがターゲット顧客に配られず、段ボールに入ったまま、オフィスの片隅に山積みになっていたり、広告宣伝をしても店頭に在庫がなかったり――。そうした風景を見たことはないだろうか。これでは、組織として“戦えている”とはいえない。
「世界一シンプルな経営の教科書」とあるように、本書は、枝葉末節を排し、経営の一貫性こそが成功の秘訣であること(Visionary Consistency)を説いた経営指南書である。
本書をめくると、極めてベーシックなコンセプトが並んでいることが分かるだろう。一つ一つのコンセプトは既に知っているものばかりと感じるかもしれない。しかし、それらがどういう位置付けのものか、どういった局面で必要とされるのかを理解することが重要である。そうすることで、経営の全体像が見えてくる。戦略の策定方法や、競合他社とのギャップを正しく比較する方法など、それぞれの位置付けや順番が明確に理解できるはずだ。
優先順位付けや、それに基づく資源配分が苦手で、重要なこととそうでないことを並列に取り扱いがち……といわれる日本のビジネスマンにとって欠かせない企業運営の重要ポイントがコンパクトにまとめられている。図表も、コンサルタントならではの実戦的な作りで、実務の参考となる。
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