週末メールや付箋を活用――情報共有が組織を強くする:問われるコーチング力(2/2 ページ)
前回の連載で示した「4つの質問」はリーダーだけでなく、チームや組織に対しても有効なコーチング手法である。
壁に貼り出し、情報の「見える化」を
チームや組織で4つの質問を活用する方法は次の通りである。
1. 定例会議で利用する
2. 毎週末にメールで共有する
3. 付箋に書き込んで、壁に貼っておく
まずは、毎週定例会議を開き(通常会議を行っているのであればそこに組み込んでもよい)、その会議で4つの質問を活用するのである。やり方は以下である。
1. 会議の冒頭で4つの質問を記入し、議論する
2. 事前に記入し、会議の前に参加メンバーにメールしておき、会議で議論する
会議で記入する際には、1つの質問に対して時間を決めて答えていくことを心掛けてほしい(1問につき1分30秒が理想)。時間をかけるといろいろと考え込んでしまい、ポイントとずれたことを書いてしまうことがある。記入したものは会議の参加メンバーがお互いに発表し議論する。
2つ目は、毎週末にメールで共有するというものである。金曜日に記入しチームのメンバーにメールで送っておくのである。それに対して感じることがあれば、意見やメッセージをメールあるいは口頭で伝える。
最後は、付箋の活用だ。4つの質問について、付箋に回答を記入し、それを職場の壁に貼っておく。その際、以前記入したものははがさずに、上から貼り重ねていく。壁に貼ってある付箋をめくるだけで、前週、前々週、1カ月前の行動や考えを目にすることが可能になる。自分やメンバーの行動を振り返ることができるのである。
リーダーのフォローが鍵
チームや組織で4つの質問を活用するメリットを以下にまとめる。
1. 周りのメンバーがどのようなことを考えて仕事に取り組んでいるか、明確になる
2. 一方通行の情報だけでなく、それぞれが情報を発信することで、情報が循環し、情報の共有化が進む
3. 日々のコミュニケーションが活発になり、職場の雰囲気がよくなる
4. 成功事例や失敗事例が共有化されることで、組織力が強化される
5. 記録に残すことで、1年前や半年前と比較して、現在の組織の成長度合いを確認できる
チームや組織で4つの質問を活用する際に、リーダーに気を付けてほしいことがある。それは、メンバーが書いてきたことに対して、必ず何かコメントすることだ。口頭でもメールでも構わない。せっかくいろいろと記入しても、何も反応がないとやる気が失せてしまうものである。「この仕事、頑張っているね」「この点を注意してほしい」など何かしら述べる。そうすることで、自分は気に掛けてもらっているから頑張ろうと感じるのである。4つの質問について詳しく知りたい人は、拙著『強いチームの報・連・相』(中経出版)を参考にしてほしい。
4つの質問を活用することで、組織の情報共有が進み、勝てる組織になると確信している。
プロフィール
細川馨(ほそかわ かおる)
ビジネスコーチ株式会社代表取締役
外資系生命保険入社。支社長、支社開発室長などを経て、2003年にプロコーチとして独立。2005年に当社を設立し、代表取締役に就任。コーチングを勤務先の保険会社に導入し、独自の営業システムを構築、業績を著しく伸ばす。業績を必ず伸ばす「コンサルティングコーチング」を独自のスタイルとし、現在大企業管理職への研修、企業のコーポレートコーチとして活躍。日経ビジネスアソシエ、日経ベンチャー、東商新聞連載。世界ビジネスコーチ協会資格検定委員会委員、CFP認定者、早稲田大学ビジネス情報アカデミー講師。
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