100年に1度の危機は本当か――「大暴落1929」:経営のヒントになる1冊
初版の発行から50年以上も経つ本書は、世の中が不況や景気悪化になると、きまって売れ行きが伸びるという。今回の経済危機においても同様で、麻生首相も1冊購入したそうだ。
米国の住宅バブル崩壊であるサブプライム(信用力の低い個人向け住宅融資)問題に端を発した今回の金融危機は、その深刻さで1929年の大恐慌に匹敵すると言われる。大恐慌は1929年10月、ニューヨークの株価大暴落をきっかけに銀行などの連鎖倒産、大量の失業者へと波及し、世界経済は深刻なデフレに落ち込んだ。大恐慌に近似するといわれる今回の危機を考えるのに最適な参考書が本書。
米国のリベラル派を代表する経済学者であったジョン・K・ガルブレイス(1908-2006)の1997年版まえがきには、こう書かれている。
「本書は1955年に初版が発行された。以来40年、版を重ねている。この本がこれだけ長いこと売れ続けているのは、著者はともかく中身がいいからだと評価していただいているようだ。まずいくらかは役に立つかもしれない。だがこの本が時代を超えて長寿を保っているのは、別に理由がある。増刷され本屋に並ぶたびに、バブルや株安など何事かが起きるのだ。すると、この本への関心が高まる。そう遠くない昔に好景気が一転して深刻な恐慌につながったときのことを、多くの人が知りたいと考えるからだろう」
ガルブレイスがこの世を去った後の今回の危機でも、本書は米国でも爆発的に売れ出し、英国では危機前の20倍売れているという。もちろん、3度目の復刊となった今回、快調に増刷を重ねている。11月30日には麻生太郎首相も1冊買ったと新聞の政治面に出ている。
売れる理由は、その軽妙な筆致でバブル崩壊のありさまを描いているからだろう。大恐慌前の米国は、会社型投資信託のブーム、レバレッジ効果への信仰、バブル紳士の横行で特徴付けられる。今回の危機の原因とそっくりだ。
「終わりは、常に始まりよりも突然である。針を刺された風船がしずしずとしぼむはずがない」(1997年版まえがき)
バブル時には書棚の片隅に置かれているのに、株価暴落、バブル崩壊後には書店の店頭で山積みされる本。ぜひ、一読を薦めたい。
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