不況を改善、発展への好機とせよ:問われるコーチング力(2/2 ページ)
松下幸之助はかつて「好況よし、不況またよし。不況は改善、発展への好機なのだ」と述べた。現在の不況をチャンスととらえる発想がリーダーには不可欠だという。
顧客のニーズを優先する
これらの企業を見ると、顧客のニーズを追い求め、そのニーズに応える商品やサービスを提供し続けている企業が並んでいる。加えて、ユニクロの快進撃も目を見張るものがある。現在、衣料業界はとても厳しい状況にあり、軒並み売り上げを下げている。そんな中、ユニクロは一人勝ちの状態だ。顧客の声に耳を傾け、ニーズが何かを常に考えて、絶え間ない商品開発に励んでいるからこそなせる業である。最近発売した「マシンウォッシャブルニット」は、1年半以上かけて開発したという。単に「低価格」というだけでは、目の肥えた消費者は買わないということを認識し、低価格とともに高い品質を提供することを至上命令と考えているのだ。
この経済危機の影響を最も受けていると言われる自動車業界でも、次の時代を見据えて、立ち向かっている企業がある。日産自動車だ。カルロス・ゴーン社長は、テレビ東京のカンブリア宮殿(2009年1月5日放送)に出演し、次のようなことを話していた。
「急激な円高と金融危機で売り上げが30%以上落ちている。このような状態は誰も予想できなかったし、これまでに見たことがない。会社を守るために期間従業員や派遣社員を現状では解雇しないといけない。ただ、100年に1度と言われる大不況の今、日本経済は最大の危機であると同時に、変革の時でもある。解決の糸口は現場にある。社員と考えて計画を立てれば必ず成功する」
日産は、現在、燃料電池車の開発を積極的に進め、2010年の実用化を目指している。そのために、できるだけ買いやすい価格で販売できるように努力するとともに、燃料電池のリースや燃料電池を充電できるスタンドの設立に、海外企業と協力して取り組んでいる。
リスクをとらないと失敗する
ピンチだからといって、守りだけでは、企業は成功できない。変化に対応しながら、時代の流れ、顧客のニーズを読み取り、勝負していくことが欠かせない。変化の中でリスクをとらない人は成功しない。成功する可能性は100%ではないが、リスクを取らないと、100%失敗する。守っているだけでは失敗は目に見えている。次の世代のためにも、リスクをとっていく必要がある。
円高は外需産業にとっては厳しいが、一方で物価やガソリン価格は下がる。長期的に見れば、日本にとって非常に大きな利益をもたらすはずだ。物事にはマイナス面もプラス面もある。マイナス面を見るのではなく、プラス面を見てチャンスととらえることができるかどうか、わたしたちは今、試されているのかもしれない。
このピンチは日本の国にとっても、変わるための良いチャンスだと思う。以前に比べて多くの人が地球環境の問題や少子高齢化、年金問題など世の中で起きていることに関心を持つようになっている。国に任せてはいられない、自分たちが考えて、意見を言わなければならないと思う人が増えている。このような思いを国民が持ち始めたことは、日本が変われる大きなチャンスである。
パナソニックの創業者の松下幸之助氏は次のように述べたという。「好況よし、不況またよし。不況は改善、発展への好機なのである」と。
プロフィール
細川馨(ほそかわ かおる)
ビジネスコーチ株式会社代表取締役
外資系生命保険入社。支社長、支社開発室長などを経て、2003年にプロコーチとして独立。2005年に当社を設立し、代表取締役に就任。コーチングを勤務先の保険会社に導入し、独自の営業システムを構築、業績を著しく伸ばす。業績を必ず伸ばす「コンサルティングコーチング」を独自のスタイルとし、現在大企業管理職への研修、企業のコーポレートコーチとして活躍。日経ビジネスアソシエ、日経ベンチャー、東商新聞連載。世界ビジネスコーチ協会資格検定委員会委員、CFP認定者、早稲田大学ビジネス情報アカデミー講師。
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