社員と対話しないリーダーを見過ごすな:職場改善道場(2/2 ページ)
組織における問題の多くはコミュニケーションに関係する。ただし社員同士がやみくもに対話の量を増やせば解決するものではない。組織の中核となる人物の行動が鍵を握るからだ。
リーダーがコミュニケーションのボトルネックに
KOSは2008年5月から3カ月の間、調査対象となる社員83人(営業37人、開発31人、新規プロジェクト12人、リーダー3人)にビジネス顕微鏡を首からぶらさげさせて、業務時間中の行動を追跡した。調査開始から1カ月後、これまでの自分自身のデータを振り返り、チームごとのワークショップで結果を分析した。ワークショップでは忌憚(きたん)ない意見を出させるために、上長は参加せず、若手を中心としたメンバーと外部から日立ハイテクのコンサルタントが加わり議論した。
分析結果からはさまざまな課題が浮き彫りになった。参加した社員の多くはコミュニケーションが十分取れているという自負があったが、実際には「会議の場だけでそれ以外は会話しない」「自分が一方的に話していただけでコミュニケーションが成り立っていない」といった事実がデータから導き出された。チームリーダーや新規プロジェクトの推進役など本来ならば組織のハブになるべき人なのに、社員との対話が少ないという結果も出た。
コミュニケーションを可視化することで組織の問題点に気付き、組織目標を達成するためにはメンバー同士のコミュニケーションが不可欠だと参加者たちは改めて認識した。「意識的に挨拶するようになったほか、チーム会議やランチミーティングを積極的に行うようになった」と黒田氏は話す。リーダーの意識変革にもつながった。ワークショップではリーダーから「メンバー間のコミュニケーションを自分が阻害しているかもしれない」「中堅層の役割を明確にする必要を感じた」などの声が上がった。
コミュニケーションの量が明らかになったことで、業務の度合いも把握できるようになった。例えば通常の新入社員であれば、仕事は少なくほかの社員とのかかわりも薄いはずだが、抽出したデータを見ると部門を越えてさまざまな社員からのコミュニケーションが集中していた新入社員がいた。話を聞くと明らかにオーバーワークの状態だったという。そこで業務内容を確認し、役割に応じた適切な仕事量に見直した。黒田氏は「今後はこのデータを配置転換や人事異動など経営判断の材料に生かしていきたい」と述べた。
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