現実を直視するリーダー、目を背けるリーダー:問われるコーチング力(2/2 ページ)
厳しい経済状況にありながらも、しっかりと現実を見据え業績回復に取り組むリーダーと、根拠なく「大丈夫だ」と楽観視するリーダーがいる。その企業がどうなるか。結果は火を見るより明らかだ。
右腕を持つこと
前回、中川大臣の話題に触れ、2世、3世議員には「リーダーとして訓練されていない」人が多いという話をした。現実を直視する能力も、リーダーとして訓練していかなければいけないものである。このような能力をどのように養えばいいのか。わたしは次の2つだと考えている。
1. 「本当にこれでいいのか」と自分に問う習慣を身に付ける
2. 指摘をしてくれる右腕を持つ
まず、物事をなんとなく楽観的に考えてしまいがちな人には、「これでいいのか?」と自分自身に何度も問いかける習慣を身に付けてほしい。あるトラブルに対し、なんらかの対策を講じ、一旦はそれで事態が収拾できたとする。しかし、1回の対策で解決できるほど現実は甘くはない。ましてや、現在のように変化の激しい時代には、1度の対策ですべてが解決することのほうがまれである。対策を打ったはずが、気付いたら事態が悪化しているといった危険性もあるだろう。「これでいいのか?」と何度も問い続けて次の一手を考え、その時その時の最善の策を打ち出していく必要があることを忘れないでほしい。
次に、自分に指摘をしてくれる右腕を持つことである。信頼できる右腕の大切さは何度も話してきた。最終的に判断を下すのはリーダーだが、なかなか自分一人では判断できないこともある。そういう場合は、信頼する右腕に意見を求めたり、アイデアをもらうことが大切である。
右腕は1人である必要はない。財務に長けている人、マーケティングに強い人、営業的視点で考えられる人など、さまざまな分野で信頼できる右腕を持っておくと、自分の気付かない視点から指摘を受けられるため、楽観的になりがちな自分を戒めることができる。
結果よりもプロセス
現在は、結果よりもプロセスを重要視することが成功へとつながる時代だとわたしは考えている。結果は変えられないが、プロセスは変えられる。いいプロセスがあれば、いい結果につながる。現在の経済状況は、優秀な経済学者でも予想できなかった。ならば、現状を嘆くよりも正面から受け止めて、将来に向けて、プロセスをどのように変えたらよいかを考えればよい。結果はコントロールできないが、プロセスはコントロールできる。
現実を直視し、コントロールできることに集中するという姿勢で取り組むことによって、いかなる難局も乗り越えられると信じている。
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プロフィール
細川馨(ほそかわ かおる)
ビジネスコーチ株式会社代表取締役
外資系生命保険入社。支社長、支社開発室長などを経て、2003年にプロコーチとして独立。2005年に当社を設立し、代表取締役に就任。コーチングを勤務先の保険会社に導入し、独自の営業システムを構築、業績を著しく伸ばす。業績を必ず伸ばす「コンサルティングコーチング」を独自のスタイルとし、現在大企業管理職への研修、企業のコーポレートコーチとして活躍。日経ビジネスアソシエ、日経ベンチャー、東商新聞連載。世界ビジネスコーチ協会資格検定委員会委員、CFP認定者、早稲田大学ビジネス情報アカデミー講師。
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