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「なぜIT部門は舌が肥えたユーザーに古びた料理を押し付け続けるのか」――ウイングアーク・岡氏エグゼクティブ会員の横顔(2/2 ページ)

十数年前と比べてIT技術は飛躍的に進化し、ユーザーも賢くなった。ところが情報システムの開発や企画に携わるIT部門がまるで進歩のないことに警鐘を鳴らす。

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賢くなるユーザー、進歩のないIT部門

――日本企業のIT部門に対して何かお考えをお持ちですか。

 人材育成が課題でしょう。これまでIT部門で人材採用してこなかったため、3、4人で業務を回しているという大手企業も少なくありません。足りない部分はアウトソーシングするわけですが、丸投げ状態のためスキルやノウハウが社内に蓄積されません。内製化していないので当然新しいことに挑戦できず、ユニークなシステムもつくれません。注文通りの仕事をするのがアウトソーシングなので、そこにユニークさなど出してはいけないのです。欧米を真似たことで日本企業の良さや特徴を打ち消してしまい、そこにジレンマを感じているIT部門の方は多いはずです。

 外部からIT部門の責任者を雇い、一定期間働いて実績が出たら交代という欧米型ではなくて、会社の文化や風土を十分理解した上で、効果の高まるシステムを構築するのが日本のIT部門なのです。


――市況の悪化により、ますます人材を採用できない状況になっています。

 不況になってITを内製化する動きが強まっています。どこまでを内製化し、どこまでをアウトソーシングに頼るのか、各社のIT部門の責任者はバランスを考えていく必要があります。IT業務は人数がいればできるという仕事ではありません。独創的なアイデアを持った人、情報を自分のものにできる人がIT部門で企画を立てていかなくてはなりません。そうしたスキルを身に付けるには、現場を回ったり、IT関連の展示会やセミナーに行ったりすることが重要なのです。

 ITの仕組みは昔も今も変わっていません。変わったのはIT技術が飛躍的に向上したことと、ユーザーが賢くなったことです。ところが、舌が肥えたユーザーに20年前と同じ料理を出しても食べてくれないのに、IT部門はそれを平気で押し付けているのです。IT部門やIT業界は、現場のユーザーに対して適切なサービス、適切なスピード感を実現しなければなりません。技術は追い付いているのに、開発や企画はまったく追い付いていません。新システムができてもユーザーから見れば「やっとできたか」という感覚なのです。

物事を多角的に見る能力が不可欠

――部下の育成で心掛けていることはありますか。

 現状を正しいと思わず、物事を多角的に見るように強調しています。例えば、営業で顧客にヒアリングするとしましょう。顧客の言うことは事実だけど、すべてではないということが分からないと優れた提案などできません。ありがちなのは、言われた通りに課題をまとめ、その課題に対して顧客の望むように提案を作ってあげることです。それは提案とは言えません。顧客が気付いてない点を見つけてあげることが提案なのです。


――具体的にどのような指導を行っているのですか。

 時間を掛けて何度もレビューを繰り返し、プロセスやものの見方をきちんと学ばせます。提案書を真似しても力にはなりません。

 読書の重要性も指摘しています。多面的な考え方を習得する簡単な方法は本を読むことです。さまざまな視点を持った人たちが書いているからです。部下には本を1冊読んだらA4紙1枚に中身や感想をまとめるように言っています。それを他人が読んで理解してもらえたら、本の内容が身に付いたことになります。


――ITmedia エグゼクティブに対して、ひと言お願いします。

 記事コンテンツやセミナーなどでさまざまな情報を発信しており、有益なメディアだととらえています。わたしが連載していたからというわけではありませんが、同じ著者が違う切り口で複数回にわたりメッセージを投げる連載は読んでいて面白いです。過去にさかのぼって読むことでその人の考え方や経験が分かります。わたしにとって重要なインプットになります。


最近読んだお薦めの本:

門田隆将著「甲子園への遺言 伝説の打撃コーチ 高畠導宏の生涯

ストレス解消法:

運動することです。特にテニスとゴルフには力を入れています。健康を保つことができるし、球を打つことはストレス発散になります。

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