経営者とIT部門の対話を活性化させる――「強いIT戦略」:経営のヒントになる1冊
ITはしょせん道具でしかなく、それだけでは何らビジネス効果を生み出さない。ITに経営の意思を注ぎ込むことで、初めてビジネスを動かす“武器”になる。
ITの経営への貢献が叫ばれて久しい。ITは技術的には確実に高度化し、企業がとる施策に合わせてさまざまな選択肢が提供されてきており、十分であるかは別にして、経営におけるその位置付けは時代とともに無視できないものになっていることは確かである。
一方、昨今の世界的な景気後退局面の中において、企業の業績予想がトーンダウンすると、途端にITはコスト削減の大きな対象の一つになり、いまひとつ経営層の信頼を勝ち取りきれていないように見える。「IT投資はその効果に見合っていないのではないか」、「なぜこんなに金と時間がかかるのか」など、さまざまな疑念がCIO(最高情報責任者)をはじめIT部門に投げ掛けられている。
こうした声が上がるのは各企業のIT投資における歴史的な背景や現状によることも大きいだろうが、その中でも大きな原因の一つは、経営トップとIT部門との「対話不足」である。それを裏付けるデータは多い。アクセンチュアの調査によると、例えば「IT投資と経営目標の整合性が取れている」と答えた企業は38%に過ぎず、「経営トップとCIOのコミュニケーションは月に1回以下」と答えた企業は77%にも上る。
ITはしょせん道具でしかなく、そこに経営の意思を注ぐことで初めて経営をドライブする「武器」になり得る。「経営」に将来への青写真が必要であるように「IT投資」にも青写真が必要であり、これを両者が共有化することから始めなければならない。その意味で、この「対話不足」は非常に深刻な経営上の問題であると同時に、この問題を克服し、経営トップとIT部門の対話を充実させることで、競争戦略上の強力な武器となるITを構築することができるはずだ。
本書ではITをとらえる視点を「5つのI」(Innovation、Information、Integration、Infrastructure、Industrialization)というフレームワークで整理し、経営トップとIT部門の対話のベースを提供する。「5 つのI」フレームワークを活用し、経営の意思が注がれた真に強いITを構築することが、経営トップ、IT部門の双方に求められている。
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