「最適な組織、優れた人材をつくることがCIOの役目」――IBMのCIO
グローバル全体で128人ものCIOを配置していたIBMは、約10年前の組織改革によりCIOにかかわるすべての権限を1人に集約させた。IBMが語るCIOの理想像とは……?
米IBMのCIO(最高情報責任者)を務めるマーク・ヘネシー氏が10月29日、プレスおよびアナリストに向けてCIOの役割と自社での取り組みを説明した。ヘネシー氏はCIOのあり方の変化に触れ、「情報システム部門のユーティリティプレイヤーではなく、すべての事業部門の業務を理解し、企業戦略を策定すべきだ」と述べた。
ヘネシー氏は2007年7月にCIOに就任する以前、販売やマーケティングなど主にビジネス部門をわたり歩いてきた。2001年から2004年までは、流通チャネル管理の責任者として、全世界のIBMの対外向け資産や支出の最適化を推進してきた。「この経験がCIOの業務に生きている」とヘネシー氏は語る。CIOには、ITとビジネス両面で高度なスキルを身に付け、企業全体の戦略策定が求められているからだ。
以前のIBMは、ソフトウェア事業部門やITサービス部門など部門単位でCIOを配置していたため、横断的なスキルを持つCIOは少なかった。約10年前、全世界に128人いたCIOの機能や権限を1人に集約し、優れたITサービスとビジネス価値の提供を目指した。具体的には、全社レベルでのアーキテクチャの見直し、ガバナンスの構築、グローバルIT人材の育成などに注力した。
社内システムの大幅な統合
CIO主導の下、まずは情報システムのコスト削減を進めて、データセンターを155カ所から5カ所に、レガシーアプリケーションを1万6000個から4700個に削減した。ヘネシー氏の着任後には、5年間でIBMのデータセンターに設置された約3900台のサーバを、仮想化技術により約30台のメインフレームに統合する計画を発表した。これにより80%のエネルギーコストの削減が見込めるという。
ガバナンスの効いた組織づくりもCIOの重要な任務だという。縦割りの組織だと事業部門や拠点ごとにばらばらな業務フローが生まれて統率がとれないため、営業や技術サポートといった枠組みでプロセスを簡素化して組織の見直しを図った。「最適な人材を最適な場所に配置することも可能になる」とヘネシー氏は強調する。
IBMはグローバル全体で約33万人の社員を抱える。「全体の約50%は勤続5年未満の社員」(ヘネシー氏)であり、世代や国籍もさまざまだ。当然仕事に対する考え方は異なるわけだが、ヘネシー氏は「(多様な)人材をうまく管理することがビジネスチャンスを生む」と意気込む。
「CIOの役目は、ITとビジネスを理解する人材を育てることだ。業務部門にITスキルの高い社員を配置したり、情シス部門にビジネスに精通した社員を配置したりすることで、幅広いスキルを持った人材の育成に努めている」(ヘネシー氏)
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