あなたは部下の強みを決めつけていないか?:問われるコーチング力(2/2 ページ)
人にはそれぞれ他者には負けない強みが必ずあるはずだ。部下の強みを見つけ出し、最適な仕事を与えてあげるのがリーダーの役目である。
部下の強みを見つけ、最適な仕事を与えよ
わたしはリーダーの役割を次のように考えている。リーダーとは「他人とともに目的達成に進む人」。部下の足りないものは何かを把握し、指導し、育成する力が非常に重要であるのだ。部下を伸ばすことができるリーダーに共通するのは観察力があることだ。好き、嫌いで人を判断するのではない。人が持っている強みを観察するべきである。
わたしはどんな人間でも必ず強みを持っていると考える。リーダーはその強みを見出し、生かせる仕事をさせるべきである。部下の強みを知るためには、いろいろな仕事をやらせてみるといいだろう。多少の失敗は構わない。きっと何の苦もなく最高のパフォーマンスを出す仕事が見つかるはずである。強みを生かせる仕事を任されると、部下は目を輝かせて取り組み、成果を残すだろう。
強みを生かせる仕事を部下に任せたら、絶えず「よくやっているね」「すごいね」と褒め続けてほしい。部下から見ると、大げさで気恥ずかしく感じるかもしれないが、褒められて嫌な気がする人はいないし、やる気が起こり成果も上げるだろう。わたしは部下をお客様だと考えている。彼らは会社にとって利益を生み出してくれるからである。お客様であれば、喜ばせて気持ち良く仕事ができる環境を整えてあげることがリーダーの役目である。
相性ではなく組織力向上を優先
自分と相性が合うかどうかで人を判断し登用するリーダーもいる。それは絶対にしてはならない。自分に苦言を呈したり、がみがみとうるさいことを言ったりする人も組織を健全に発展させるためには必要である。
人を判断する基準は、相性だけではなく、組織でパフォーマンスがさらに向上するかどうかである。その基準がぶれると、特定のグループや人物だけを重宝するようになり、組織の中で不満がくすぶる。そのような組織は崩壊するだけだ。
リーダーが一人でできることは限られている。部下を多面的に見る姿勢を身に付け、いち早く彼らの強みを見つけることだ。適材適所に配置してパフォーマンスを発揮してもらい、強い組織をつくり上げていく。そのことを改めて肝に銘じて欲しい。
連載「問われるコーチング力」のバックナンバー
著者プロフィール
細川馨(ほそかわ かおる)
ビジネスコーチ株式会社代表取締役
外資系生命保険入社。支社長、支社開発室長などを経て、2003年にプロコーチとして独立。2005年に当社を設立し、代表取締役に就任。コーチングを勤務先の保険会社に導入し、独自の営業システムを構築、業績を著しく伸ばす。業績を必ず伸ばす「コンサルティングコーチング」を独自のスタイルとし、現在大企業管理職への研修、企業のコーポレートコーチとして活躍。日経ビジネスアソシエ、日経ベンチャー、東商新聞連載。世界ビジネスコーチ協会資格検定委員会委員、CFP認定者、早稲田大学ビジネス情報アカデミー講師。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- エグゼクティブ会員の横顔:「上司に怒鳴られながら仕事した30年前、こうしたマネジメントはもはや通用しない」――東レ・橘氏
国内営業18年間、海外勤務10年間仕事に打ち込んできた東レの橘氏は、3年前の2006年4月に米国子会社の社長から購買物流部門の物流部長として帰国を命じられる。製造業では地味な存在だった同部の組織および物流業務に改革のメスを入れ、社長賞を獲得するまでに育て上げた。 - 問われるコーチング力:隣に座っている部下の価値観を知っているか?
数々の功績を残した王監督率いるソフトバンクホークスと「ディズニーランド」を運営するオリエンタルランド。双方の組織に共通するのは、すべてのメンバーがお互いの価値観を把握していることだという。 - 問われるコーチング力:勝てる会社は社員が強みを共有している――任天堂に学ぶ
組織の遂行力を高めるためには「ビジョン」「価値観」「ミッション(強み)」の共有が重要である。企業が常に勝ち続けるためには、とりわけ価値観とミッションの連携が不可欠だという。 - 問われるコーチング力:リーダーが抱える20の悪い癖
元GE会長のジャック・ウェルチ氏をコーチした経験を持つエグゼクティブコーチングの第一人者によると、組織の上に立つリーダーは共通した悪い癖を抱えているという。