【第3回】Webマーケティングの未来のあるべき姿とは?:Webマーケティング集中講座(2/2 ページ)
企業が広報や宣伝を行う際、従来のようにマスメディアだけを利用する時代ではなくなりました。マーケティング活動の中核にWebを据え、顧客に対し直接的にアプローチするような手法が求められているのです。
Webを中核にIP環境でマーケティングを実行
Webセントリックマーケティングという言葉から、連想される誤解を解いておきます。これはWebやインターネットだけを活用したマーケティングではなく、マスメディアなどの従来のメディアとの連携が必須なのです。ただ、Webを中核にすることにより、マーケティングがIP環境で実行されること、つまり、マーケティング活動を定量的に計測する仕組みを作り、ROIを図ることを目的としています。
ここで言うWebとは、PCや携帯電話だけではなく、スマートフォン、ゲーム端末、地上デジタルテレビなど、すべてのインターネット接続可能端末を指します。Webセントリックマーケティングの実施には、マルチデバイスでデータを取り出せるような自動化技術が不可欠です。
従来のように、マーケティングの部分最適では不十分で、今後はますます一貫したサービスが求められます。社内では対外的なコミュニケーションに一本筋を通すためにも、部門連携や広報部と宣伝部が統一されるような新しい組織が作られることでしょう。
社外では、流入を支援するWeb広告代理店、検索エンジン対応のSEO、Webマネジメント、リアル店舗や営業部を支援するデータベースや業務支援など、個々のマーケティング支援会社が行ってきた業務も一貫した体制での取り組みが求められます。業界では各パートナー企業が業務を拡大していくほか、会社間も統合に向かいます。中核となるのは、これまでエンドユーザーに対して企業以上にエンゲージメントをしてきたWebマネジメントの会社になるべきでしょう。
SEOも今までのようなチューニングレベルのものではなく、サイトコンセプトとの連携が必須です。ビッグワードだけでなく、Long TailのようにコンバージョンがいいSEOが求められ、サイトコンセプト=>コンテンツ=>SEO=>LPO=>分析=>改善という一貫した流れをつくる体制が求められます。
社内外に広がる業務連携
デバイスの融合やクロスメディアの活用だけでなく業務連携も必要です。既存データベースとオンラインデータの統合、行動履歴や購買データ、ほかのチャネルとの統合を進めるためにプラットフォーム化を目指したシステム統合が盛んになるでしょう。
業務連携という意味では、今まで、社内外に業務連携を推進する部門はありませんでした。企業内や他社との協業も盛んになるため、この業務を誰が受け持つかは議論を要するところですが、メディアバイイングや広告配信が自動化される中、代理店に求められる役割は大きくなる可能性があります。
ソーシャルメディアを使ったクチコミを誘発するなど、顧客と共同してマーケティングができる仕組みも必須です。顧客が求めているサービスを提供するなどして継続的な関係を構築することで、購入などの行動に誘導できるマーケティングが求められます。
分析ツールを十分に活用している企業はまだ少ないようですが、分析はマーケティングのPDCAを回すために重要度が増すでしょう。
今は、企業もパートナー企業も同じ方向を見ているようです。たとえWebセントリックマーケティングという言葉が使われないとしても、Webマーケティングの完成形はもう見えています。今は、その未来系に向かい、これを実施するだけです。
第9回 ITmedia エグゼクティブ セミナーのお知らせ
1990年代後半に登場したインターネットは、今や人々の日常生活に遍在し、欠くことのできないメディアとなっています。これに伴い経済活動も次第にネット上へとシフトしつつあります。厳しい経済環境にあっても、オンラインショッピングサイトの業績が好調なのは、その証左でしょう。
伝統的な企業にとっても、ネットは極めて重要なチャネルとなっています。そして何よりも、商品の開発から製造、販売、サポートに至るライフサイクル全体にわたって、顧客とつながる仕組みとなり得るものです。今、企業が取り組むべきは「ビジネスイノベーション」です。現在のビジネスモデルに囚われることなく、また、これまで培ってきたマーケティングのやり方や組織の在り方に縛られることなく、全く新しいビジネスやサービスが求められています。今こそ、企業にとって大切な顧客との絆を築き、彼らの満足度を高め、収益へと結びつけていく「Webセントリックマーケティング」で成功を掴むときです。
本セミナーでは、ビジネスの本質的な課題を解決する、Web中心のマーケティングについて解説するとともに、それを支える技術基盤やe-マーケティングのための具体的なソリューションを紹介します。
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著者プロフィール
石黒不二代(いしぐろ ふじよ)
ネットイヤーグループ株式会社代表取締役社長 兼 CEO
ブラザー工業、外資系企業を経て、スタンフォード大学にてMBA取得。シリコンバレーにてハイテク系コンサルティング会社を設立、日米間の技術移転などに従事。2000年よりネットイヤーグループ代表取締役として、大企業を中心に、事業の本質的な課題を解決するためWebを中核に据えたマーケティングを支援し独自のブランドを確立。日経情報ストラテジー連載コラム「石黒不二代のCIOは眠れない」など著書や寄稿多数。経済産業省 IT経営戦略会議委員に就任。
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