これまでの成功体験は通用しないと思え:問われるコーチング力(2/2 ページ)
不景気にもかかわらずヒット商品を連発する企業もあれば、過去の成功体験にしがみつき埋没していく企業もある。
これまでのやり方は通用しないと思え
以前のコラムで、リーダーが陥りやすい20の悪癖について述べた。これを提唱しているのは、エグゼクティブコーチングの第一人者であり、わたしの良き友人でもあるマーシャル・ゴールドスミス氏である。彼は「成功した人ほど変化を嫌う。成功した人は自分の手腕と能力に確信を持っていて、今後も勝ち続けるだけの手腕と才能を持っていると自分に言い聞かせる。そして、これからも成功する自信を持っており、成功するだろうと楽観的に考え、成功することを自分自身で選択したと考えている」と述べている。
その人が成功してきたやり方は、確かにこれまでは通用したかもしれないが、これからも通用するとは限らないのだ。
これは組織にも当てはまる。成功を収めた組織は満足し、これでいけると考える。成功までの道程を成功の方程式とし、何でもその方程式に当てはめようとしてしまうのだ。しかし、実際に成功している組織は方程式があるから成功できたわけではない。これまでのやり方をただ続けていれば成功できるという時代はとうの昔に終わっているのだ。
成功し続ける組織には「事実を見る目」があると考えている。それも「批判的に」見る目である。では、どうしたら事実を批判的に見ることができるのだろうか? それには今までの成功体験をすべて疑ってかかることだ。成功体験というのは、言い換えれば、この方法を使えば必ず成功できるといった固定観念である。この固定観念をぬぐい去り、何度となく自問自答することである。
例えば、
今この商品はヒットしているが、こればかり売り続けていていいのか?
安い商品が注目を浴びているが、安いだけでいいのか?
環境への配慮が叫ばれるが、ただ環境に良い商品を作るだけでいいのか?
といったようにである。
リーダーにはこのような質問を実際に現場で働く社員に投げ掛けて欲しい。リーダーは現場に出ていないことが多い。しかし、彼らは消費者と実際に触れ、消費者の生の声を聞いている。一時的にヒットしていても、実際に買った人から「○○という機能があったらもっと良かった」、「○○を改善してほしかった」、「○○が不満」といった声が届いているかもしれないからだ。そのような意見を拾い、商品やサービス開発に生かすことができれば、次のヒット商品を生み出せる可能性が高くなる。
リーダーが事実に目を向け、現場の生の声を聞き、地道な積み重ねをして、改善を続けられるかどうかが、成功する組織をつくる鍵になる。一朝一夕でできるものではない。皆さんにもぜひ、そんなリーダーになって欲しい。
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著者プロフィール
細川馨(ほそかわ かおる)
ビジネスコーチ株式会社代表取締役
外資系生命保険入社。支社長、支社開発室長などを経て、2003年にプロコーチとして独立。2005年に当社を設立し、代表取締役に就任。コーチングを勤務先の保険会社に導入し、独自の営業システムを構築、業績を著しく伸ばす。業績を必ず伸ばす「コンサルティングコーチング」を独自のスタイルとし、現在大企業管理職への研修、企業のコーポレートコーチとして活躍。日経ビジネスアソシエ、日経ベンチャー、東商新聞連載。世界ビジネスコーチ協会資格検定委員会委員、CFP認定者、早稲田大学ビジネス情報アカデミー講師。
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