【最終回】チーム型マネジメントの実践:日本流「チーム型マネジメント」(3/3 ページ)
真のグローバル企業になるため、日本企業が目指すチーム型マネジメントについて述べてきた。最終回では具体的な実践方法に迫る。
ステップ4:論理的コミュニケーション力の強化
チーム型マネジメントを策定、導入するとともに、組織メンバーの論理的コミュニケーション力の獲得が必須である。これは自身で考え発表し、討議の中でメンバーを説得し、チーム型マネジメントの必要性を証明するコミュニケーション力を指す。これらを(1)説明するコミュニケーション力、(2)説得するコミュニケーション力、(3)証明するコミュニケーション力の3つの要素とし、それぞれの研修内容について述べる。
(1)説明するコミュニケーション力とは、プレゼンテーション能力にあたる。日本人マネジャーが自分の言葉で、自身の方針としてチーム型マネジメントを海外現地法人のメンバーに論旨明快に説明する能力である。研修内容としては、参加者自身でテーマを選定し、実際のプレゼンテーションを行うことで論旨の構成や表現力の向上を狙う。
(2)説得するコミュニケーション力とは、グループディスカッションや折衝におけるリーダーシップ構築となる。日本人マネジャーが議論をリードし、メンバーを説得することである。研修内容としては、グループ討論や社内折衝(Interpersonal negotiations)でどのようにリーダーシップを確立し、説得するかを実際のグループ討論を通して学ぶ(参考資料)。
(3)証明するコミュニケーション力とは、論理的コミュニケーションの核であり、Evidential Communicationである。具体的事例を用いてどのようにチーム型マネジメントの必然性を証明するかにある。研修内容としては、論理的コミュニケーションの特徴と異文化ビジネスの価値観の違いを習得する(参考資料)。
研修の中では、参加者自身がチーム型マネジメントを説明、説得、証明することに焦点を当てている。参加者の課題を研修テーマとして設定し、活発な演習や発表を通して自身で解決策にたどり着くのが良い。いかにグローバルで通用するチーム型マネジメントシステムを根付かせるかは、一重にマネジャーのコミュニケーション能力にかかっている。
ステップ5:チーム型マネジメントの定着化
最終ステップとしては、チーム型マネジメントを導入した後の監視や修正、組織文化やリーダーシップとの調整、他部門や他部署への展開などが考えられる。このステップでは、導入した部門の成果を具体的に示し、海外現地法人などへのベストプラクティスとして成果に結び付けるステップでもある。
以上、チーム型マネジメント実践のステップについて述べた。当社ではチーム型マネジメントの実践から個人型マネジメントへの対応に関わる研修やプロセスコンサルテーションを提供している。課題解決の解(コンテンツ)の提供よりも、解に至るまでの過程(プロセス)の支援に焦点を当てている。重要なのは参加者が主体的に解にたどり着くことを支援することである。いくら優れた解があっても、自分自身で納得しなければ実行には至らない。
全10回の連載では、グローバル化を目指す日本企業の視点から、チーム型マネジメントを実践するための方法や考え方について述べてきた。当連載が読者のお役に立てば幸いである。
日本流「チーム型マネジメント」 バックナンバー一覧
著者プロフィール
岩下仁(いわした ひとし)
バリューアソシエイツインク Value Associates Inc代表。戦略と人のグローバル化を支援する経営コンサルティングファーム。代表は、スペインIE Business School MBA取得、トリリンガルなビジネスコンサルタント。過去に大手コンサルティング会社勤務し戦略・業務案件に従事。専門領域は、海外マネジメント全般(異文化・組織コミュニケーション、組織改革、人材育成)とマーケティング全般(グローバル事業・マーケティング戦略立案、事業監査、企業価値評価、市場競合調査分析)。
現在ITmedia オルタナティブブログで“グローバルインサイト”を執筆中。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- Googleに習う仕事の進め方
仕事のルールを明文化したGoogleの「10の黄金律」は、日本企業が見習うべきチーム型マネジメントの手法が明快に規定されている。 - 日本企業が目指すのはAppleではなくHP way
同じ欧米企業でも組織や文化はさまざまだ。ここでは、個人型マネジメントの代表である米Appleと、チーム型マネジメントの代表である米HPを比較する。 - モノづくりからコトづくりへ:「世界の知で創る」――日産のグローバル共創戦略
野中郁次郎、徳岡晃一郎共著の「世界の知で創る」(東洋経済新報社刊)は1980年代後半から開始された日産自動車の海外開発拠点づくりを題材にしながら、ビジネスにおける「知の共創」の本質に迫ろうという意欲作だ。 - 日本の製造業が世界で勝ち抜くためには――「地球企業への変革」
従来のようにグローバル対応と現地化をやみくもに進めていては、より激化するグローバルでの企業競争に勝機はない。