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インド人の2割が「トヨタ」を米国ブランドと認識

徹底した製品ブランディングこそがインド市場攻略の鍵を握る。裏を返せば、国際的なブランドであっても、現地でのプロモーションがなければ認知度は低い。

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 世界経済を揺るがした大危機の深刻さは、破竹の勢いで成長を遂げてきたインドにとっても例外ではなかった。2005年から2007年の実質GDP(国内総生産)成長率は9%を超えていたものの、昨秋のリーマン・ショックで状況は一変。2008年は6.7%、2009年の経済成長は4〜6%との見通しが示されている(2009年4月時点)。

 グローバル戦略コンサルティング二部の岩垂好彦上級コンサルタント
グローバル戦略コンサルティング二部の岩垂好彦上級コンサルタント

 とはいえ、インド経済が根底から崩壊したわけではない。例えば株価の低迷で証券投資は減少したが、直接投資は堅調に伸びており、インド経済の中長期的な成長に対するマーケットの期待は依然として高い。日本企業の進出も製造業を中心に増え続けていて、毎年20〜30%増益の企業も少なくないという。今後さらなる競争の激化が見込まれるインド市場において、日本企業はいかなる戦略をとるべきなのか。

 戦略立案に向けてインド市場の特性を理解する必要がある。かつてインドは外国との金融および貿易取引をしない閉鎖経済だったため、国内製品しかなく消費者の選択肢は皆無だった。良い製品ブランドを手に入れるためには海外に出向く必要があった。1991年の経済自由化以降、さまざまな外資企業が市場参入してきており、消費者はさまざまな製品ブランドを選択できるようになった。

 現在、市場における代表的な消費者は富裕層と呼ばれる人たちである。世帯年収50万ルピー(約100万円)以上の富裕層を対象とした野村総合研究所(NRI)の調査によると、彼らは特定ブランドへの強い思い入れはないものの、性能と価格のバランスが良く、認知度の高いブランドを支持することが分かった。その中で日本企業製品のブランドイメージはどうだろうか。性能や品質、技術では高い評価を得ている一方で、広告宣伝への投資やアフターサービスが不十分だという結果が出ている。

日本企業製品に対するイメージ(出典:野村総合研究所)
日本企業製品に対するイメージ(出典:野村総合研究所)

 「インドでは広告宣伝の多いブランドが信頼されるという傾向にある。広告がなく、価格も高いブランドは認知度が低い」とNRI グローバル戦略コンサルティング二部の岩垂好彦上級コンサルタントは話す。

 それを象徴するのがブランドの所属国に対する認識の低さである。同調査によると、「トヨタ」や「キヤノン」を日本企業のブランドだと認識しているのは半数程度で、約2割がトヨタを米国企業、キヤノンを韓国企業のブランドだと回答している。これは日本企業に限ったことではない。2割程度の回答者が「サムスン」や「現代」を日本企業のブランドだと誤認しているという。岩垂氏は「たとえ国際的に有名な企業ブランドであっても、インドの消費者が理解しているとは限らない」と強調する。

ブランドの所属国の認識(出典:野村総合研究所)
ブランドの所属国の認識(出典:野村総合研究所)

 インドの消費者に選ばれるブランドになるには、認知不足の壁を崩すことが重要だ。そのためにはTV広告や小売店における一定以上の棚の確保などプロモーションへの投資が不可欠である。加えて、最上級レベルから多くの消費者が手の届く価格帯までの幅広い商品ラインアップを設けることで、現地でのブランド作りを進めることができる。

 その点において成功を収めている日本企業がソニーだ。収益性や売り上げ規模、回収期間などを想定した適切な製品ポートフォリオを描き、継続的なブランドイメージ向上を図っている。実際、「ソニー」に対するブランドの信頼性は高く、前述の調査においても7割以上の消費者が「ソニー=日本のブランド」という正しい認識を持っている。

「商品ラインアップを広げ中間所得層にも手の届く商品を投入することで、収益性やブランドを確保しつつ、売り上げ規模拡大を目指す。これこそが日本企業のとるべき戦略なのだ」(岩垂氏)

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