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ファンケル 中島理人化粧品カンパニー 副カンパニー長【対談連載】石黒不二代の「ビジネス革新のヒントをつかめ」(3/3 ページ)

世の中の「不」を解消することを企業理念に掲げるファンケルは、顧客満足を最優先に考えたマーケティングを実践する企業といえるでしょう。その取り組みを聞きました。

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CRMに回り道なし

 現在、ファンケルには登録顧客1000万人のデータがあります。その中でアクティブ顧客は175万人、30年掛かって構築したロイヤル顧客は9万人です。ライフサイクルが短くなり、嗜好も多様化する中、7カ月以内の購買というアクティブ顧客の定義も変わってくるでしょう。次の30年のCRMのデータをどう作るかで企業業績も変わってきます。

 CRMは、すでに購買履歴だけでは情報が少ない時代です。中島さんは、アンケートや顧客プロファイルなどの定性データと購入パターンなどの定量データを統合してターゲット顧客を具現化します。これは、架空の顧客像を用いたペルソナマーケティングに似ていますが、すでに購買しているデータと定性データを合わせてクラスター分析ができます。それを顧客リストとつなげることで、顧客の属性というものが明確になってきます。

 それを基に、情報誌をつくり換え、広告表現をクラスターごとに変えていきます。これを検証・改善を重ねていくことで、優良顧客に育て上げるまでの王道のルートをつくりたいと中島さんは言います。

 例えば、ファンケルのお客様を、美容系に意識が高い人と、主流であるスキンケア系に興味がある人の2つにクラスターを分け、広告パターンを2種類作ります。当初、設定したクラスターに、化粧・美容育成のためのフォローとスキンケア育成のためのフォローを行うのですが、購入やレスポンスデータを使ってイエス、ノーを繰り返すことにより、どちらのクラスターに入るかを徐々に明確にしていき、単独フォローの効率性を高めていきます。もちろん、カタログやWebサイトでは、どちらのクラスターにも通じる共通フォローや、クロスフォローを意図的にかけることもあります。こういった決め細やかな対応が、レガシーCRMをデジタルCRMにしていくための道順です。まさに、王道に回り道はなし、ですね。

 ファンケルの社内システム「ヤッホー・システム」には、タッチポイントから集まった月に3万件もの声を集約しています。1人がクレームしたらその人の後ろにはクレームしている人が100人いると思って、ファンケル社員はそれらのお客さまの声の代弁者であるとのマインドを持っています。クレームにならないとき、それはクレームを収める努力がなされているのです。これを、イントラネットだけでなく、週間トピックス、月次報告、CS委員会にも反映させています。

 中島さんは、このシステムをプル型からプッシュ型に変えました。お客様の声という重要な情報は否が応でも目に飛び込んでくるように仕向けることで、より声なき声が「こだま」のように会社全体に届くよう(ヤッホー・システムの由来)になり、顧客の不の解消に大きく貢献できたと言います。

 嗜好は、ますます、多様化しているので、面をとるのは難しい時代です。ファンケルの地道な努力が実る時代でもあります。


著者プロフィール

石黒不二代(いしぐろ ふじよ)

ネットイヤーグループ株式会社代表取締役社長 兼 CEO

ブラザー工業、外資系企業を経て、スタンフォード大学にてMBA取得。シリコンバレーにてハイテク系コンサルティング会社を設立、日米間の技術移転などに従事。2000年よりネットイヤーグループ代表取締役として、大企業を中心に、事業の本質的な課題を解決するためWebを中核に据えたマーケティングを支援し独自のブランドを確立。日経情報ストラテジー連載コラム「石黒不二代のCIOは眠れない」など著書や寄稿多数。経済産業省 IT経営戦略会議委員に就任。



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