「ほかしのおーじさま」――むかしあって、これからもおこるおはなし:ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(3/3 ページ)
お金もうけの話につられて、だまされてしまう人が減らないのはなぜだろうか? 子どものころに読んだ物語を思い出してほしい。おいしい話には裏があることを……。
グリーム婆さんのよく分かる説明
今回の話はまーったくの架空の話なんじゃが、まーったくよくある話なんじゃよ。バレッジさんは、フエーテルに損をさせようという気はなかったんじゃが、自分もフエーテルも大損してしまったのう。
その理由はたまたま事業が成功したのを、バレッジさんは自分の実力と勘違いしてしまったことがすべてじゃ。
これを春夏秋冬が2年おきに巡る星の話でたとえてみるとじゃな、ある男が冬の間から、そのうち暖かくなるぞといっていたんじゃが、なかなか暖かくならないので皆からうそつき呼ばわりされておった。ところが2年経つと、本当にだんだんと暖かくなってきた。はじめは皆半信半疑だったんじゃが、ついに夏になると皆が男はすごい、未来が分かるすごいやつだと褒めたたえるようになった。
皆は男の言うことを無条件で信じるようになったんじゃ。そして、秋。少し寒くなっても、男はまたすぐ暖かくなるから冬服はいらないと周りの人間に言っていた。だが、暖かくなるどころか、本格的な冬が来て、男もその取り巻きも皆凍え死んでしまったとさ。
どうじゃろう、バレッジさんとフエーテルの話に似ておらんか? どんなやり方でもたまたまうまくいくことはあるんじゃ。ただ、ずっと成果を出せるやり方は本当に少ないんじゃよ。
だから、事業コンサルタントにだまされたくなかったら、最低でも5年、理想は10年以上成功し続けている人に聞くことじゃ。たかだか2〜3年ぽっと出で成功した人はまぐれかもしれんからのう。
グリーム婆さんの悪知恵袋
ぼかした予言が偶然当たったら、それを大々的に宣伝して信者を獲得。そこからお金をしぼり取れ!
最後に。
モノガタリを読んでいただきありがとうございます。いかがだったでしょうか?
今回の話は皆さんの前によく現れるコンサルタントという人たちや企業の一端を物語にしてみました。父はわたしが子どものころに会社を立ち上げて、10数年、会社を経営してきました。その中でコンサルタントに経営相談をして何の役にも立たなかったという話を何回か耳にしたのが今回の執筆動機の1つです。
今回のモノガタリを読んで、そんなに分析やら経済状況が見通せるなら、なぜ自分で事業を興して、そのノウハウを独り占めしないのだろうか、という疑問を抱くきっかけになれば幸いです。
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著者プロフィール
マネー・ヘッタ・チャン
「小難しいことを簡単に」をモットーとするビジネスサブカルチャー作家。
本業は6年間負けなしのプロ投資家。現在数億円を運用しながら、作家として金融世界でマネー減っちゃった可哀想な人たちの痛面白い話を、実体験を交えながら紹介している。投資家としての成績は、6年平均で毎年約17%。日経平均が半分になった2008年も12%で運用、サブプライムの余波で波乱に満ちた昨年も9%の好成績を残す。座右の銘は「人間は過去を繰り返す生き物である」。
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