「離れる勇気」を持つことが問題解決のコツ:ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)
手段ばかりに気を取られていると、目的を見失ってしまうことがある。問題を解決するには意識を変えて本質をとらえることが肝要だ。
意識を変える2つの質問
上司 「そもそも、改善点はどこだ」
部下 「何のために、改善するのですか」
上司 「……」
部下 「誰のために、改善するのですか」
手段ばかりに意識を向けていると、目的を見失ってしまうことがあります。
手段に向いている意識を、目的に向ける簡単な質問があります。それは、「何のため?」と「誰のため?」です。手段に向いている間は、「どうやれば?」や「答えはどこに?」という疑問が多くなります。問題解決に直面したとき、どちらに意識が向くでしょうか。
例えば、「資料が時間までに出来上がらない」という問題に直面したとしましょう。そのとき、「どうやって資料をつくろうか」「どうすれば時間に間に合うか」などと考えてしまいませんか。つまり、手段に意識が向いているために、その手段を達成することが目的だと、錯覚してしまうのです。そういうときは、「何のために資料を作るのか」「誰のために時間を守っているのか」と考えてみましょう。そうすると、資料を作る目的や、締め切りを決めた目的に意識が移ります。その結果、資料や期限は、ある目的を達成するための手段であることに気が付きます。この違いが大きいのです。
たった2つの質問が、意識を180度変えるのです。意識が変われば、改善点が変わるかもしれません。改善点が変われば、解決策も変わってきます。このように意識を変えることが、問題解決にとって極めて重要な一歩なのです。
上司 「じゃ、目の前の手段から、一度距離をとることが大切なのか」
部下 「あえて離れる勇気です」
上司 「あるべき姿が見えてきそうだ」
部下 「ま、コーヒーでも飲んで」
問題解決のコツは、固定観念から離れて、本質をとらえることです。そして、本質から新たな答えを導き出すことです。
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著者プロフィール
横田尚哉(よこた ひさや)
株式会社ファンクショナル・アプローチ研究所
世界最大の企業・GE(ゼネラル・エレクトリック)の改善手法をアレンジして10年間で総額1兆円分の公共事業の改善に乗り出し、コスト縮減総額2000億円を実現させた実績を持つ、業界屈指のコンサルタント。たった3年で同改善手法「バリュー・エンジニアリング」を日本の50%以上の地域に普及させた功績により、橋梁新聞社からブリッジマン・オブ・ザ・イヤー・2006を受賞。ダイナミックな問題解決手法を駆使し短期間で数億円から数十億円の工事費を浮かせる実績が評判を呼び、全国から問い合わせが殺到。コンサルティングサービスは約6カ月待ちとなっている。CVS(国際バリュースペシャリスト)などの資格を有し、2004〜2006年には早稲田大学大学院非常勤講師も務めた。
著書に『ワンランク上の問題解決の技術《実践編》視点を変える「ファンクショナル・アプローチ」のすすめ』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。
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