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【第4回】経営者がクラウドを活用する条件――クラウド活用力がビジネス価値創出力に直結する変革期をリードするIT経営者(3/3 ページ)

クラウドコンピューティング導入について、経営者の判断が求められるようなケースは少ないというのが2〜3年前の状況だったが、少し変化が生じてきている。

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経営者に求められるクラウドコンピューティング活用力

 これらの事例が示すように、クラウドコンピューティングは新たなビジネス価値を生み出すドライバーであり、経営者や事業責任者は、その特性を理解し、コスト削減よりもビジネスモデル変革や新規事業創出を目的として積極的な活用をリードすることが求められます。

 さらにもう1つ見逃してならない動きが、クラウドが社会基盤に組み込まれるようになる点です。日本政府が2010年から2011年度にかけてクラウドコンピューティングの特区を創設し、2020年度までに高度道路交通システム(ITS)や「医療」「電子行政」といった分野クラウドコンピューティングを活用した社会基盤を整備し、70兆円の新市場創出を目指すという発表がありました(出典:2010年6月21日付日本経済新聞朝刊)。

 このようにクラウド化される社会基盤の動向を注視しつつ、自社のビジネスにどう利用するかについても戦略的な判断が求められます。すなわち、従来、企業ごとに整備してきた業務基盤の一部が社会基盤として、またクラウドサービス提供者から安価に利用できるようになることは、競争の前提条件が変わることであり、これまで莫大な経営資源を自社で保有する大企業の優位性が薄れ、多くの経営資源を持たない新興企業がクラウドを活用して短期間かつローコストで事業を拡大することにより新たな競合関係が発生し得ることを意味します。

 従って、特に大企業においては、ビジネス戦略を策定、実行するうえで、自社固有で持つべき経営資源の選択と外部の資源であるクラウドの活用を念頭に、迅速かつ大胆な発想で経営資源の再配分の決断が求められるようになります。

 次回(第5回)は「ビジネスインテリジェンス力を高め非連続な変化を先取りする」をテーマに、市場の変化とその意味を誰よりも早く察知し、ビジネス変革に連動させるための要件と事例についてご紹介します。

著者プロフィール

加藤陽一(かとう よういち)

日本アイ・ビー・エム(株)グローバルビジネスサービス事業 ビジネスイノベーションサービス パートナー

1984年3月、電気通信大学電気通信学部情報数理工学科卒、同年4月日本IBM入社。金融機関担当営業部門において顧客担当システム・エンジニアとして顧客企業の情報システム企画、構築、運用の技術支援を担当。1995年に日本IBMのコンサルティング サービス部門に異動し、金融機関、製造業、流通業、公益企業の事業戦略、業務改革、IT戦略、IT構造改革のコンサルティング業務に従事。2002年からIBMビジネスコンサルティングサービス 戦略グループ・ITトランスフォーメンションコンサルティングのリーダー。2007年1月、同社戦略グループ IT戦略コンサルティング担当パートナーに就任。現在に至る。



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