職場で実践できるアンチエイジング:エグゼクティブのためのアンチエイジング(2/2 ページ)
アンチエイジングで従業員みんなの健康を増進し、バランスの良い生活で生産性を向上。
健康増進で生産性向上
わたしたちの調査ではエグゼクティブの方は自己管理能力が高いことが分かりました。一般従業員に健診結果を渡しても、1年間ほったらかしてますます悪くなることがしばしばあります。検診日の直前だけ断食したり、断酒したり……。しかしエグゼクティブは指摘されたことをしっかり直してくる方が多いです。
これらの検診には抗加齢QOL(Quality of Life)共通問診票が使われます。産業医によっては「こんな問診票でなにが分かる。無理してよく書く人だっているではないか?」と言う人もあります。そうなのです。無理して実際よりもよく書いてしまう人が実は問題なのです。
ストレスが過剰に加わった時にうつ病になりやすい人は、「完全主義で几帳面」「仕事や家事を人任せにできない」「融通がきかない」「人にどう見られているか非常に気になる」という性格が多いと言われています。実際にうつ状態になるとさまざまな症状を訴えますが、発症前の高ストレス状態にある時は、問診票成績と身体検査成績の間に乖離が見られることが分かってきました。これを利用すれば少しでも多くのうつ病発生をくいとめることができるでしょう。
心の症状をどのように扱うか。とかく精神科医師に頼り過ぎのこの問題は、産業医や人間ドック・検診医のみならず多くの医師が避けて通れない問題になっています。共通問診票では、これまで軽視されがちであった「心の症状」にも重点を置き、「心の症状」と「身体の症状や所見」との関連を調べました。心と身体は決して別々に考えることができないほど密接につながっています。企業検診の項目に抗加齢QOL共通問診票を加え、母集団と比較することによって本当に様々なことが分かるのです。これが職場で実践してほしいアンチエイジング企業検診の第一歩です。
エグゼクティブの方にはぜひとも抗加齢医学を学んでほしいと考えています。労働衛生、産業衛生の分野にアンチエイジング医学が加われば、従業員の健康増進に役立ち、皆が元気になり、欠勤率が減り、生産性が高まります。しかも病気も減り、健康保険組合の支出も減ります。エグゼクティブであるあなた自身のQOL向上はもちろん、従業員みんなの健康増進のためにも、職場でアンチエイジングの考えを生かしてほしいと思います。
著者プロフィール
米井嘉一(よねい よしかず)
同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンター教授
1958年東京生まれ。1986年に慶應義塾大学大学院医学研究科博士課程を修了後、UCLAに留学。1989年に帰国後、日本鋼管病院内科 人間ドック脳ドック室部長を経て、2005年に同志社大学アンチエイジングリサーチセンター教授就任。現在は同志社大学生命医科学部の教授を兼任し研究に尽力するほか、日本抗加齢医学会の国際担当理事として、アジア、ヨーロッパ、アメリカなど各国の抗加齢医学会との交流に努める。主な著書に「抗加齢医学入門」(慶應義塾大学出版会)、「アンチエイジングのすすめ」(新潮社)など。
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