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「エンタメ・インフラ」にビジネスチャンス――アジア新興国バングラデシュ女流コンサルタント、アジアを歩く(3/3 ページ)

日本から新興国に行く場合に「それなりに楽しそうだ」とか「不自由はなさそうだ」と思えるかどうかは重要な要素だ。バングラデシュのビジネスチャンスはそこにある。

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今、バングラデシュで最も必要な社会インフラとは?

 バングラデシュが経済成長を加速していくためには、上記のような運輸交通のインフラ、エネルギー供給のインフラ、そして、情報インフラが整備されていくことが必要である。しかし、これらの社会インフラが速やかに整備されていくためには、もう一つ別のインフラが必要である。それは「エンタメ・インフラ」である。

 新興国の社会インフラを整備していくためには、それを担う海外の企業とその従業員が必要である。特に、海外企業の従業員は重要だ。いくら企業が「新興国に進出するぞ」と言っても、従業員たちが新興国に行く気にならないと始めることすらできない。経営層が命令を下し、無理矢理従業員を新興国に送ったとしても、大きな成果を望むことはできない。肝心なのは、そういった従業員の人たちが、「新興国に行ったら、それなりに楽しそうだ」とか「新興国に行っても、不自由はなさそうだ」と思えるかどうかなのだ。


インド料理店

 わたしがバングラデシュに滞在して感じたのは、海外から来た人たちが楽しいと思えるような娯楽的な要素が少ないことである。例えば、わたしたち日本人であれば、少しお酒でも飲みたいなあと思うことがあると思うが、そういう店は少ない。イスラム教のレストランは、お酒を置かないところがほとんどなのである。日本食が食べたい、と思っても、わたしが知る限りでは、2軒しかない。そういう国に行け、と言われても、なかなか乗り気がしないだろうと感じる。

 現在、ダッカには幾つかの外国レストランがある。韓国料理、ベトナム料理、タイ料理、日本料理、インド料理、それぞれ1店舗ずつしかない。これらのレストランはどこも高級レストランであり、富裕層や駐在人のたまり場になっている。また、先述の日本食レストランではお酒を飲むことができる数少ない店であるため、ちょっとした社交場のようになっている。


豪華日本食レストラン「WASABI」の料理長

 わたしが今年5月にダッカへ訪問した際には、日本食レストランは“泉”という、お酒の持ち込みが可能なレストランの1軒だけであった。9月に訪問した際には、お酒が置いてある“わさび”というお店もオープンしていた。

 この“わさび”というお店の日本料理長に尋ねると、毎日大繁盛のようで、1日に集客人数が150人ぐらいになるという。他、タイ料理、インド料理、韓国料理、ベトナム料理のレストランに行っても同様であろう。どのレストランも豪華な外観と内装であり、空間ともに十分に楽しむことができる。


欧米人が集まる

 少しずつこうしたお店ができつつあるものの、まだまだ少ないというのが実状である。わたしは、ここにこそ、ビジネスチャンスがあると感じた。海外から来る人たちが楽しいと思える「エンタメ・インフラ」を提供すること自体がビジネスになる。例えば、マッサージ(SPA)、BAR、ライブショー、美容サロン、レジャー施設、リゾートなどの娯楽施設やサービスが考えられる。そして、海外から来る多くの人たちがそれを利用し、楽しんでいる姿を見せると、次はバングラデシュの富裕層がそれを利用するようになるかもしれない。これは中国などでも見られた現象である。そして、バングラデシュの平均賃金が順調に伸びれば、それを利用する人たちも増えていくかもしれない。

 エンタメ・インフラは、運輸交通のインフラ、エネルギー供給のインフラ、情報インフラなどのベースになるだけでなく、それらのインフラ整備に劣らず、中・長期的に広がりがある。エンタメ・インフラは、大企業しか取り組むことができないというわけではなく、中小企業であっても取り組みやすいビジネスである。日本企業は、そういったところを攻めることを考えてもいいのではないか。それは、バングラデシュの社会インフラ整備全体を支えるビジネスであり、極めて意義深いものなのである。

著者プロフィール

辻 佳子(つじ よしこ)

デロイト トーマツ コンサルティング所属コンサルタント。システムエンジニアを経た後、アクセンチュア・テクノロジー・ソリューションズにて、官公庁や製造業等の企業統合PMIに伴うBPR、大規模なアウトソーシング化/中国オフショア化のプロジェクトに従事。大連・上海・日本を行き来し、チームの運営・進行管理者としてブリッジ的な役割を担う。現在、デロイト トーマツ コンサルティング所属。中国+アジア途上国におけるビジネスのほか、IT、BPR、BPO/ITOの分野で活躍している。


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