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“ハンター”ではできないことヘッドハンターの視点(2/2 ページ)

わたしは一通り彼(本社人事役員)の話を聞いた後で「あなたは御社の日本法人が日本でどう言われているか知っていますか?」と聞きました。

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 Bさんは「実際にオフィスを歩きまわってみたが、本社とは全く雰囲気が違う。社員間での会話もなく、みんなとても表情が暗い、A社が日本市場でどう思われているかもっと教えてほしい」と言われました。その時点でもわたしが聞いている評判を伝えることはできましたが、とりあえず彼の来日中のランチタイムを全てわたしのためにブロックするようにお願いしました。

 わたしはオフィスに戻ってからお願いごとができそうなA社のパートナー企業、競合会社などの役員に連絡して、Bさんと会ってA社をどう思うか話をしてほしいとお願いしました。彼らにとってはフリーランチ程度のメリットしかないにもかかわらず、大変ありがたいことに複数の方が快諾してくださいました。次の日から、わたしもすべてのランチに同席させてもらいました。確かに私は「忌憚なきご意見を述べていただいて結構です」と伝えましたが、実際にはここぞとばかりに「そこまで言わなくても・・・・・・」という話もたくさん飛び出してきました。

 事実ではないことも噂になっていたりはしましたが、Bさんはわたしとの最初の電話のように反論することなく、1人1人の話をとても熱心に聞いて、忙しい中貴重な時間をとってくれたことに心からお礼を言っていました。

 最終日にBさんは「今回のことは少なからずショックだったが、知らないままだったらもっと大変なことになっていた。日本法人をこのように疲弊させてしまったのには本社に大きな問題があることがよく分かった。これからもA社のビジネスパートナーとして力を貸してほしい」と言って帰って行きました。その後、この企業とは長いお付き合いをすることになりました。

 エージェントとして“短期的な売り上げ”と割り切ってしまえば、上記でわたしがしたような面倒でかつリスクのある行動は避けた方がいいかもしれません。でも、 “人”に関るビジネスはそう簡単に割り切れることばかりではありません。

 ヘッド“ハンター”と呼ばれていましたが、実際はクライアントとの関係も候補者になり得る人たちとの関係も、時間をかけて大切に育てる“ファーマー”にならなければできないというのが15年間の経験を通じてわたしが学んだことでした。

著者プロフィール

岩本香織(いわもと かおり)

G&S Global Advisors Inc. 副社長

USの大学卒業後、アンダーセンコンサルティング(現:アクセンチュア)入社。東京事務所初の女性マネージャー。米国ならびにフィリピンでの駐在を含む8年間に、大手日系・外資系企業のビジネス/ITコンサルティングプロジェクトを担当。 1994年コーン・フェリー(KFI)入社、1998年外資系ソフトウェアベンダーを経て、1999年KFI復帰、テクノロジーチーム日本代表。2002年〜2006年テクノロジーチームAsia/Pacific代表兼務。2010年8月KFI退職。2010年9月より現職。


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