マレーシアで見た、ローカリゼーション・アプローチとしてのダイバーシフィケーション:女流コンサルタント、アジアを歩く(3/3 ページ)
民族構成が極めて複雑なマレーシアで、資生堂マレーシア取締役社長の河内正之氏に、マレーシアでの事業運営や市場動向、現地ならではの取り組み状況などについて聞いた。そこには、ローカリゼーション・アプローチとしてのダイバーシフィケーションがあった。
ローカリゼーション・アプローチとしてのダイバーシフィケーション
ここでとても興味深いのは、マレーシアという国に進出するに当たってのローカリゼーション(地域化・地元化)のアプローチがダイバーシフィケーション(多様化)にあるという点だ。ローカリゼーションというと、特定地域の独自の慣習や文化に合せることを想像しがちで、どちらかというと、“特化”という言葉と結びつきやすいイメージがある。しかし、マレーシアでのローカリゼーションはそれとは異なる。
確かに、マレーシアの多様性(ダイバーシティ)は、マレーシアにおける独自の慣習や文化には違いないが、そのローカリゼーションのアプローチであるダイバーシフィケーション(多様化)は、マネジメントの観点で言えば、「汎化」という言葉と結びつきやすいし、マーケットの観点で言えば、「多種化」という言葉が相応しいだろうか。いずれにせよ、特化という言葉とは、相容れない。これは、アジア新興国への進出を考える際の1つのヒントになるのではないだろうか。
これまでの記事でも触れてきたとおり、民族構成が複雑なアジア新興国は少なくない。むしろ、日本のような国が特殊で、民族、宗教、言語が入り混じっている国々のほうが珍しくないと言っても過言ではない。こうした国々に進出していくことを考えると、特定の国、市場、民族、宗教、言語という枠の中にある独自の慣習や文化に合せていくというアプローチだけでなく、多様性(ダイバーシティ)ということを前提に、独自性や特殊性を一切排除して透明になって誰もが受け入れられるようにしたり、それぞれの消費者の特性を俯瞰的にとらえてそれぞれの人々に合った商品やサービスを備えたりするというアプローチは、有効であろう。
また、ローカリゼーションのアプローチとして、ダイバーシフィケーション(多様化)を図る、或いはダイバーシティを前提にするということは、それぞれのアジア新興国の現地の人々や市場を正確にとらえ理解することにつながるのではないだろうか。そして、そういった理解こそが、日本企業のアジア新興国進出において最も必要なことなのではないだろうか。
著者プロフィール
辻 佳子(つじ よしこ)
デロイト トーマツ コンサルティング所属コンサルタント。システムエンジニアを経た後、アクセンチュア・テクノロジー・ソリューションズにて、官公庁や製造業等の企業統合PMIに伴うBPR、大規模なアウトソーシング化/中国オフショア化のプロジェクトに従事。大連・上海・日本を行き来し、チームの運営・進行管理者としてブリッジ的な役割を担う。現在、デロイト トーマツ コンサルティング所属。中国+アジア途上国におけるビジネスのほか、IT、BPR、BPO/ITOの分野で活躍している。
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