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汚染浄化装置の配管ミスは、仕組み化・マニュアル化の盲点だった『坂の上の雲』から学ぶビジネスの要諦(2/2 ページ)

購入した装置をマニュアル通り操作したが、マニュアルが間違っていたのでうまくいかなかった。だから購入者に責任はない、と専門家が言えるのだろうか。

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仕組み化、マニュアル化は組織力を高めるが、応用も同様に必要

 わたしは、組織を運用するためには仕組み化やマニュアル化をすることは決して悪いことではないと思っているし、むしろそうする部分を増やすことに賛成である。

 ただ、仕組み化やマニュアル化「ボケ」はいけない。少なくとも有事には、応用を利かせなくてはいけない。

 別の小さな例をあげる。ある日土砂降りの雨のとなったが傘がなく、雨宿りにファストフードチェーン店にわたしは飛び込んだ。

 すると女性店員が「いらっしゃいませ〜」とずぶ濡れのわたしを「溢れんばかりの笑顔で」迎えくれた。マニュアルの通りちゃんやるべきことをやっている。しかし、こんなかわいそうな姿をさらけ出しているときに笑顔はないだろう……。

 同日夕刻、また雨に降られて濡れて、今度は居酒屋に入った。眉をひそめて「ひどい雨ね。こんな時によく来てくれましたね」と言った女将。状況によっての対応である。

 もし、東京電力が新しく生まれ変わるのなら、大組織病・マニュアル化からの時と場合の脱却も考えてほしいものである。

「坂の上の雲」に見る大企業病

「そこへいくと、日本人は徳川300年のあいだ、わが田を守る百姓根性が骨のずいまで沁みこんでいるうえに、あらゆる意味での冒険を幕府が禁じてきたために、精神の習性としてその要素が薄い。一方、日本人は忠実できめられたいことをよくまもるために、大艦の乗組員にはむいている。戦艦の砲側にあって、上官の五体が飛び、同僚がひきさかれて倒れようとも、水兵たちは持ち場を離れようとしない。が、個人としての勇気や個人としての冒険精神を必要とする駆逐艦の世界は、一見日本人に適っているようで、適っていないのではあるまいか」(『坂の上の雲』、司馬遼太郎、文春文庫)


 日本海海戦に先立ち、黄海でロシア海軍と日本海軍が遭遇した。小型の駆逐艦は、敵の戦艦に思い切り近づいて、魚雷を発射しないと当たらない。大波に揺られ、相手もジグザグ航行しているからだ。

 駆逐艦からの攻撃不発から学び、艦長の人事異動を含めて大反省をし、その後の日本海海戦でバルチック艦隊を撃破するという成功を迎えたのであった。

 自分の過ちを過ちと認める勇気が必要であり、「過ちては改むるにはばかることなかれ」である。自責と他責を踏まえ、失敗を直ぐに改めることを学びたい。

著者プロフィール

古川裕倫

株式会社多久案代表、日本駐車場開発株式会社 社外取締役

1954年生まれ。早稲田大学商学部卒業。1977年三井物産入社(エネルギー本部、情報産業本部、業務本部投資総括室)。その間、ロサンゼルス、ニューヨークで通算10年間勤務。2000年株式会社ホリプロ入社、取締役執行役員。2007年株式会社リンクステーション副社長。「先人・先輩の教えを後世に順送りする」ことを信条とし、無料勉強会「世田谷ビジネス塾」を開催している。書著に「他社から引き抜かれる社員になれ」(ファーストプレス)、「バカ上司その傾向と対策」(集英社新書)、「女性が職場で損する理由」(扶桑社新書)、「仕事の大切なことは『坂の上の雲』が教えてくれた」(三笠書房)、「あたりまえだけどなかなかできない51歳からのルール」(明日香出版)、「課長のノート」(かんき出版)、他多数。古川ひろのりの公式ウエブサイト。


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